高リン血症治療薬、7剤の使い分けを整理しよう
高リン血症治療薬(リン吸着薬+NHE3阻害薬)は薬価収載が進み、選択肢が増えています。本記事は2026年7月時点の各薬剤の電子添文・インタビューフォームをもとに、作用機序・適応・服用量の違いを整理したものです。日々の疑義照会や処方提案の参考にしてください。
① なぜ使い分けが必要なのか
高リン血症治療薬は、大きく分けて「リン吸着薬(金属含有/ポリマー)」と「NHE3阻害薬」の3タイプがあります。同じ「リンを下げる薬」でも、適応(保存期か透析中か)・便秘や下痢などの副作用プロフィール・薬価・服用錠数が薬剤ごとに異なるため、患者背景に応じた使い分けが必要です。

高リン血症治療薬って種類が多くて、正直どれも同じに見えてしまいます…



作用機序で3タイプに分けて、保存期か透析中かで絞り込むと整理しやすいですよ。順番に見ていきましょう。
② 作用機序で3タイプに分類
| タイプ | 薬剤 |
|---|---|
| リン吸着薬(金属含有) | 沈降炭酸カルシウム(カルタン)、炭酸ランタン(ホスレノール)、スクロオキシ水酸化鉄(ピートル)、クエン酸第二鉄(リオナ) |
| リン吸着薬(ポリマー) | セベラマー塩酸塩(レナジェル/フォスブロック)、ビキサロマー(キックリン) |
| NHE3阻害薬 | テナパノル塩酸塩(フォゼベル) |
金属含有・ポリマーの吸着薬は消化管内でリンを物理的に吸着しますが、フォゼベルのみ吸着薬ではなく、腸管上皮のNa+/H+交換輸送体3(NHE3)を阻害してリン透過性を下げる薬剤です。作用点がまったく異なるため、リン吸着薬同士の切り替えとは考え方を分けて理解しておく必要があります。
③ 保存期/透析期での使い分け一覧
| 薬剤 | 保存期 | 透析中 |
|---|---|---|
| 沈降炭酸カルシウム | ○ | ○ |
| クエン酸第二鉄(リオナ) | ○ | ○ |
| ビキサロマー(キックリン) | ○ | ○ |
| 炭酸ランタン(ホスレノール) | ○ | ○ |
| セベラマー塩酸塩(レナジェル/フォスブロック) | × | ○ |
| スクロオキシ水酸化鉄(ピートル) | × | ○(適応は透析中のみ) |
| テナパノル塩酸塩(フォゼベル) | × | ○(適応は透析中のみ) |
KDIGO・日本透析医学会のガイドラインでは、CKDステージG3b〜5で食事療法を行っても血清リン値が管理目標を超えて上昇する場合にリン吸着薬の投与が推奨されています。まずは食事指導が前提であることを押さえておきましょう。
④ 各薬剤の特徴
沈降炭酸カルシウム(カルタン)
- 普通錠/OD錠。先発・後発とも薬価差がほとんどなく安価
- 他のリン吸着薬に比べ消化器症状が比較的少ない
- 高カルシウム血症・異所性石灰化のリスクがあり、甲状腺機能低下症の患者には禁忌(カルシウム利用が亢進し症状を増悪するおそれがあるため)



低Ca血症の患者さんには良い選択肢ですが、それよりも血管石灰化などが問題視されやすいので、そこは注意しておきたいですね。
炭酸ランタン(ホスレノール)
- 普通錠/OD錠/チュアブル錠/顆粒と剤形の選択肢が最も多く、後発品もあり
- 吸着力が高く、服用量が少なめで済む
- 悪心・嘔吐の発現頻度が比較的高いほか、キレート形成により併用薬の吸収に影響することがある
スクロオキシ水酸化鉄(ピートル)
- チュアブル錠/顆粒。適応は「透析中」の患者のみ
- チュアブル錠は噛み砕いて服用する必要がある
- 後発品がなく薬価は高め。キレート形成による併用薬への影響あり



ピートルは鉄を含んでいますが、鉄剤の代わりにはならないんですよね?



その通りです。次に紹介するリオナとは違い、鉄補充を目的とした薬剤ではありません。ただし一部の鉄が吸収され、結果的に鉄貯蔵の改善につながることがあると報告されています。
クエン酸第二鉄(リオナ)
- 普通錠のみ。高リン血症と鉄欠乏性貧血の両方に効能を持つ唯一の薬剤で、保存期でも使用可
- 経口鉄剤の中では胃腸障害が比較的少ない
- 後発品がなく薬価は高め。クエン酸を含むため、保存期で問題となりやすい代謝性アシドーシスの是正効果も期待されている
セベラマー塩酸塩(レナジェル/フォスブロック)
- 普通錠。体内に吸収されないポリマーで安全性が高く、LDLコレステロールを低下させる副次的効果も期待できる
- 腸内で水分を吸収して膨張するため便秘・腸閉塞のリスクが高く、腸閉塞の患者には禁忌
- 適応は「透析中」の患者のみで、代謝性アシドーシスを悪化させるおそれがある
ビキサロマー(キックリン)
- カプセル/顆粒。セベラマーの膨張性を改良したポリマー製剤で、便秘等のリスクが低減されている
- 代謝性アシドーシスへの影響が少なく、保存期・透析中いずれにも使用可能
- 禁忌は腸閉塞。多くのARB製剤の吸収を阻害するため、同時服用を避け、可能な限り間隔を空ける必要がある



セベラマーで便秘が問題になる場合の切り替え先として選択肢になります。ただしARBとの併用では吸収に影響するので、服薬指導では服用間隔の確認を忘れないようにしたいですね。
テナパノル塩酸塩(フォゼベル)
- 普通錠。唯一の吸着薬ではないNHE3阻害薬で、1日2回・少ない錠数で済むためアドヒアランス向上が期待できる
- 電子添文上、その他の副作用として下痢が61.3%と高頻度に発現し、重度の下痢(0.5%)は脱水につながるおそれがある。休薬・減量の目安を患者に伝えておく必要がある
- 適応は「透析中」の患者のみ。併用注意はエナラプリルのみ(本剤がOATP2B1を阻害し、エナラプリルの血中濃度を低下させる)で、他のリン吸着薬とも併用可能



下痢の頻度がかなり高いんですね…途中でやめてしまう患者さんも多そうです。



リン低下作用が強い分、開始時は下痢が出ても腸炎ではないことを説明しつつ、継続できるかどうかを一緒に確認していく薬剤ですね。
脱水兆候(口渇、倦怠感、血圧低下など)が出た場合は休薬・減量を検討します。
⑤ 服用量を比較してみよう
各薬剤の最大規格を服用した場合の、1日あたりの最大服用量(錠数・カプセル数)です。
| 薬剤 | 1日最大量 | 最大規格 | 最大服用量 |
|---|---|---|---|
| セベラマー塩酸塩(レナジェル/フォスブロック) | 9000mg | 250mg | 36錠 |
| ビキサロマー(キックリン) | 7500mg | 250mg | 30カプセル |
| クエン酸第二鉄(リオナ) | 6000mg | 250mg | 24錠 |
| 沈降炭酸カルシウム(カルタン) | 3000mg※ | 500mg | 6〜9錠※ |
| スクロオキシ水酸化鉄(ピートル) | 3000mg | 500mg | 6錠 |
| 炭酸ランタン(ホスレノール) | 2250mg | 500mg | 4.5錠 |
| テナパノル塩酸塩(フォゼベル) | 60mg | 30mg | 2錠 |
※沈降炭酸カルシウムは症状により適宜増減とされ、明確な上限が設定されていません。
服用量(錠数・カプセル数)は患者さんのアドヒアランスに直結するため、処方提案の際は薬価だけでなく「1回に何錠飲むか」も合わせて確認しておきたいポイントです。
⑥ まとめ
- 高リン血症治療薬は「金属含有吸着薬」「ポリマー吸着薬」「NHE3阻害薬」の3タイプ
- 保存期に使えるのはカルタン・リオナ・キックリン・ホスレノールの4剤。レナジェル/フォスブロック・ピートル・フォゼベルは透析中のみ
- 便秘系(ポリマー吸着薬)・悪心嘔吐系(ランタン)・下痢系(フォゼベル)と、副作用プロフィールが薬剤ごとに異なるため、患者の消化器症状の出方に合わせた提案が有用
- 服用錠数・薬価・併用薬への影響も含めて総合的に選択する



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参考文献・情報源
- 各薬剤の電子添文(PMDA医薬品医療機器情報提供ホームページ、2026年7月確認)
- 沈降炭酸カルシウム各社製剤、ホスレノール(炭酸ランタン水和物)、ピートル(スクロオキシ水酸化鉄)、リオナ(クエン酸第二鉄水和物)、レナジェル/フォスブロック(セベラマー塩酸塩)、キックリン(ビキサロマー)、フォゼベル(テナパノル塩酸塩)
- フォゼベル インタビューフォーム(協和キリン株式会社、2026年2月版)
- フォゼベル 医薬品リスク管理計画書(PMDA RMP)
- KDIGO CKD-MBDガイドライン/日本透析医学会「慢性腎臓病患者における腎性貧血・骨ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」(保存期の投与推奨に関する記載)
※本記事は2026年7月29日時点の電子添文等の情報に基づいています。薬価・適応・用法用量は改定される可能性があるため、処方提案時は必ず最新版をご確認ください。










