CKD患者の降圧目標、原則「130/80未満」に統一 ― 日本腎臓学会ステートメントを読む

CKD患者の降圧目標、原則「130/80未満」に統一 ― 日本腎臓学会ステートメントを読む

2026年6月25日、日本腎臓学会から『慢性腎臓病(CKD)患者の血圧管理に関するステートメント』(日腎会誌2026;68(5):253-258)が公表されました。日本高血圧学会の『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』(2025年8月29日発刊)との整合性を図るために策定されたもので、CKD診療における降圧目標がアップデートされています。本記事はステートメント原文・JSH2025関連情報を一次情報として整理したものです(情報は2026年8月1日時点)。

目次

なぜ今、CKD患者の降圧目標が見直されたのか

腎臓学会からステートメントが出たって聞いたんですけど、そもそもなんでガイドラインじゃなくて「ステートメント」なんですか?

日本腎臓学会は『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』と『CKD診療ガイド2024』を発刊していて、そこでCKD患者の降圧目標を示していたんです。
ところがその後、日本高血圧学会が2025年8月に『JSH2025』を発刊して、CKD合併高血圧の管理目標を新しいメタ解析結果に基づいて改訂したんですね。

2つの学会で数字がずれてしまう可能性があったってことですか。

そうなんです。臨床現場が混乱しないように、腎臓学会側の見解を整理して示したのが今回のステートメントという位置づけのようです。
改訂版のガイドラインを一から作り直すのではなく、既存の『CKD診療ガイド2024』の推奨を、JSH2025と整合する形にアップデートする、という性格の文書ですね。

降圧目標:原則「130/80未満」に統一

ステートメントの核心は、CKD患者の降圧目標を、糖尿病の有無や蛋白尿区分(A1〜A3)にかかわらず、原則として診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)に統一したことです。

CKD診療ガイド2024ステートメント2026
降圧目標の原則蛋白尿の有無や合併症により異なる一律 130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)
蛋白尿陰性(A1)・糖尿病なし診察室140/90mmHg未満(家庭135/85mmHg未満)130/80mmHg未満を目指すが、140/90mmHg未満を中間目標として慎重に進める
蛋白尿陽性(A2, A3)診察室130/80mmHg未満(家庭125/75mmHg未満)変更なし(130/80mmHg未満)
75歳以上年齢による一律な区分年齢による一律区分は廃止。腎機能・ADL等に応じた個別化対応

蛋白尿陰性・糖尿病なしの人だけ、いきなり130/80を目指すんじゃなくて140/90を中間目標にするのは、慎重にしているということですよね。

はい。ここは正直、腎臓学会と高血圧学会で解釈が完全に一致しているわけではない部分のようです。
この患者群は元々エビデンスが乏しく、海外のRCTを日本人にそのまま外挿してよいかという慎重論もあって、腎臓学会側は急性腎障害(AKI)のリスクも踏まえて段階的な降圧を推奨しています。それでも最終的な目標は130/80未満で一致しているので、「急がず、
でも同じゴールを目指す」という理解でよさそうです。

推奨降圧薬:CKDステートメントとJSH2025全般の位置づけの違い

薬物治療については、実は「CKDステートメントが示す推奨薬」と「JSH2025全般の降圧薬選択ステップ」の2つの枠組みがあるので、ここを混同しないように整理しておきます。

CKDステートメントの推奨(蛋白尿区分別)JSH2025全般の治療ステップ
蛋白尿陰性(A1)第一選択:RAS阻害薬 or CCB or 利尿薬
併用:他の第一選択薬から選択(病態に応じARNI・MRAも)
Step1:G1降圧薬(ARB/ACE阻害薬、長時間型Ca拮抗薬、少量サイアザイド系利尿薬、β遮断薬)を単剤投与
蛋白尿陽性(A2, A3)第一選択:RAS阻害薬
併用:CCB or 利尿薬
Step2:G1薬2剤併用+病態に応じG2薬(ARNI, MRA)
Step3:G1・G2から3剤併用(原則サイアザイド系利尿薬)

同じCKDの話なのに、薬の選び方が2通り書かれていて混乱します……。

JSH2025のStep1〜3は、CKDに限らず高血圧治療全体に共通する「どの順番で薬を足していくか」という段階的併用の考え方のようですね。
一方でCKDステートメントの表は、蛋白尿の有無で腎保護の観点から第一選択薬をどう組み立てるかを示したものという位置づけみたいです。

じゃあ、CKD患者に対しては両方を重ねて見る、という感じですか?

そのイメージでよさそうですね。「RAS阻害薬を軸にする」という大枠はCKDステートメントで押さえつつ、実際に増量・併用していく段階の考え方はJSH2025のStepに沿う、という重ね方になると思います。

75歳以上の高齢者への対応(参考情報)

ステートメント本文では、75歳以上の高齢者について「年齢による一律な区分ではなく、腎機能・年齢・ADL(日常生活動作)等に応じた個別化対応を行う」とされています。ただし、身体機能別の具体的な目標血圧の表は、今回のCKDステートメント本体には掲載されていません。 ステートメントは「詳細は『JSH2025』および日本老年医学会・日本高血圧学会合同『要介護高齢者における降圧療法の適正化に関する実践的指針』も参照されたい」として、別文書への参照を促す形になっています。

スライドに載っていた「Category1〜4」の表は、じゃあこのステートメントの図ではないんですね。

そのようですね。
あの区分(自立度に応じて目標が130/80未満→140未満→150未満→個別判断とゆるくなっていく考え方)は、JSH2025や老年医学会との合同ステートメント側で示されている枠組みのようで、今回のCKD側のステートメントが直接示している数値ではありませんでした。
実務では参考になる整理だと思いますが、具体的な数値は元資料で確認してから使うのが安全だと思います。

収縮期血圧を下げすぎないようにする、という話も聞きました。

急性腎障害や電解質異常、低血圧関連症状(めまい・ふらつき・立ちくらみ)には注意しながら降圧を進める、という記載があります。
下げること自体は推奨されつつ、下げすぎのリスクにも配慮する、というバランスの取り方は共通しているようですね。

薬剤師として押さえておきたいポイント

  • 蛋白尿陽性のCKD患者では、第一選択薬にRAS阻害薬以外が処方されていないか確認する視点が持てるとよさそうです。
  • 蛋白尿陰性・非糖尿病の患者で140/90〜130/80の間の値が続いている場合、それが「中間目標として様子を見ている段階」なのか、単に目標未達のまま様子見になっているだけなのか、処方意図を確認する余地があります。
  • 高齢CKD患者の降圧強化時は、めまい・ふらつき・立ちくらみといった低血圧症状の有無を、服薬指導の際に聞き取っておくとよさそうです。

まとめ

CKD患者の降圧目標は、糖尿病・蛋白尿の有無を問わず原則130/80mmHg未満(家庭125/75mmHg未満)に統一されました。ただし蛋白尿陰性・非糖尿病患者では140/90を中間目標に慎重に進めること、75歳以上は年齢一律ではなくADL等に応じた個別化が必要なことは変わりません。高齢者の具体的な段階的目標値については、JSH2025や要介護高齢者向けの合同ステートメントなど、CKDステートメント以外の資料も併せて確認することをおすすめします。

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参考文献・情報源

  • 日本腎臓学会「CKD患者の血圧管理に関する検討小委員会」. 慢性腎臓病(CKD)患者の血圧管理に関するステートメント. 日腎会誌 2026;68(5):253-258.(策定:2026年6月25日)
  • 日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025), ライフサイエンス出版, 2025.
  • 日本腎臓学会CKD診療ガイドライン改訂委員会編. CKD診療ガイド2024, 東京医学社, 2024.
  • 日本老年医学会・日本高血圧学会. 要介護高齢者における降圧療法の適正化に関する実践的指針.
  • 日本高血圧学会「高血圧の10のファクト〜国民の皆さんへ〜」.

免責事項:本記事は一次情報に基づく情報提供を目的としており、診断・治療・服薬指導の代替ではありません。医療従事者の方は、必ず最新の添付文書・インタビューフォームでご確認のうえご判断ください。一般の方は自己判断で薬の選択・服用・中止をせず、必ず医師・薬剤師にご相談ください。体調に異変があれば速やかに医療機関を受診してください。本記事の情報利用により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。

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この記事を書いた人

永遠の学習者_φ(・_・)

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