湿布は早めに剥がしていいというのはホント?

Noriko
こんにちは。
薬剤師のNorikoです。今回はよく医師、薬剤師が言うアドバイス
「かぶれやすい方は早めに湿布を剥がしていいですよ〜」についてそれって本当?
その根拠は?について調べてみました。

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早めに剥がす利点は?

早めに剥がすのは主にかぶれ対策のためです。
長時間貼っていればいるほどかぶれやすいと言われており、
肌を休める時間を作ることが重要とされています。
ホクナリンテープなど全身作用を期待した小さなテープ剤などは
貼る場所を毎回変えることでかぶれを予防することができますが、
痛みに対するいわゆる湿布は痛いところに貼るので
どうしても毎回同じ場所になってしまうんですよね。
なので貼りっぱなし&剥がす時にも肌を傷めるの繰り返しになり
かぶれやすくなってしまいます。
それを防ぐために、肌を休める時間が必要と言われています。
肌が強くて全然平気という方もいますけどね。

 

ちなみに、パップとテープの使い分け
かぶれに対する使い分けについての記事もありますのでよろしかったら
こちらの記事もどうぞ。
⇨パップ剤とテープ剤の使い分け 

ゲルやクリーム剤などの塗り薬についての記事
⇨痛み止めの塗り薬は1日何回塗ったらいいの?

整形外科医はどのように伝えているのか?

いくつかの整形外科のHPで確認してみると

☑︎1日2回のタイプは4~6時間
(医師によっては2~3時間)

☑︎1日1回タイプは12時間
(医師によっては8~10時間)

これくらいの時間貼っておけば
12時間(1日2回タイプ)または、24時間(1日1回タイプ)貼っていた時と同じ効果があるので早めに剥がして肌を休ませましょう。

と説明をされているところが多いです。
理由としては
6時間(または12時間)で濃度がピークに達し、
その後は濃度が下がるため貼っていても意味がない
とのことです。

 

Noriko
では実際のところどうなのでしょうか?
根拠となる資料を見てみましょう。

 

根拠となる資料は?

いろいろ探してみたのですが、ここについて解説されている資料が見つからなかったので、インタビューフォームで確認してみました。
代表的な湿布薬
☑︎セルタッチ(成分名:フェルビナク)
☑︎アドフィード(成分名:フルルビプロフェン)
☑︎ロキソニン(成分名:ロキソプロフェン)
☑︎モーラス(成分名:ケトプロフェン)
について調べてみました。

 

セルタッチパップ

単回貼付時
フェルビナク貼付剤(パップ剤:10cm×14cm:フェルビナクとして 70mg 含有)4 枚を 健康成人男子 5 例の背部に 12 時間単回貼付したときのフェルビナクの平均血清中濃度 は、下図のような推移を示す
(セルタッチインタビューフォームより)

 

こちらは一見なだらかに減っているようですが、
左のメモリを見るとわかるように、
実際にはもっと急激に減っているということが分かります。

これをみると8時間と12時間ではあまり血漿中濃度の差がないため
8時間で剥がしてしまっても良い気もしますが、
早く剥がす分、血中から消失する時間も早まるということになるので、
8時間で剥がした時と12時間で剥がした時で効果が同じとは言い切れないですね。

8~12時間の間は、吸収と消失の割合が同じ程度ということで、定常状態になっていると考えられると思います。

少なくとも、単回使用の場合は効果が切れるのは早まるのではないでしょうか?

 

でもまあ、連続して使う場合、6〜8時間で剥がしておいて、12時間後にまた貼れば、十分な効果が期待できそうですね。

アドフィードパップ

単回投与健常成人 10 例の皮膚にフルルビプロフェン 40mg 含有貼付剤を 14 時間貼付した場合、血 漿中濃度は 13.8 時間で最高(38.5ng/mL)となった
(アドフィードパップ インタビューフォームより)

 

 

アドフィードの場合、1日2回ですが、
交換タイミングの12時間よりも後にピークが来ています。
剥がしたのはピークを過ぎた14時間後です。

う〜ん、これはどうでしょう?
6時間で剥がしてしまうとだいぶもったいない気がしますね。
この場合、継続するとしても、6時間で剥がしてしまって果たして十分な効果が出るのか微妙ですね・・・

ちなみにインタビューフォームでは連続投与として12時間おきの貼り替えでは、濃度がプラトーになることが確認されていました。
毎回6時間で剥がしてしまうと、同じような結果が出るとは言えないですね。

ロキソニンパップ

単回投与 1%ロキソニンパップ4枚(100mg)を健康成人男子6例の背部に12時間経費投与した時の血漿中濃度をGC/MS法で測定した結果、最高血中濃度Cmaxは未変化帯のロキソプロフェン、trabs-OH体(活性代謝物)、cis-OH体でそれぞれ89.2,42.0,28.9ng/mlであった。
(ロキソニンパップ インタビューフォームより)

 

こちらは用法は1日1回ですが、
試験では12時間で剥がしていますね。

4時間でピークになっており、徐々に血漿中濃度は減っていますが、
16時間ごろから一度盛り返し、24時間ごろからまた減少になっています。

これをみると、確かに12時間貼っておけばその後も効果が続き
1日ある程度効果が持続していると言えそうですね。
(単回投与で16時間から盛り上がってる理由はわかりません、すみません😅)

なので、ロキソニンに関しては12時間で剥がしてしまっても効果はある程度持続すると言えますね。

ただ、連続投与は24時間ごとの検証で行われており、
過剰投与になることなくプラトーに達していたので、
やはり用法は1日1回になるのですね。

 

モーラスパップ

単回貼付
健康成人男子7名の背部への旧製剤(ケトプロフェン;30mg)1 枚、12時間単回貼付において、投与12時間後に43.11ng/mLの血清中 濃度を示し、48時間後には血清中よりほとんど消失していた。
(モーラスパップ インタビューフォームより)

 

こうみると剥がした途端(12時間)に血清中濃度がガクンと下がっているので
なんかもうちょっと貼っててもいいんじゃないか?
なんて素人目には思うのですが、
用法は1日2回(12時間)ということですので、きっとこのまま貼っていても効果が見られなかったのかもしれません。

ロキソニンのように剥がした後も定常になることはなく
一定に濃度が減少しているのが分かります。

始めの4時間で急激に吸収され、その後穏やかになっています。

なので、これを見ると、
1日2回のものは4〜6時間程度貼っておけば
ほとんどが吸収されているから剥がしていいということになるのかもしれません。

 

モーラステープ

単回貼付した血中濃度健康成人男子6名の背部へのモーラス®テープ20mg 1枚(ケトプロフェ ン:20mg)24時間単回貼付において、投与12.7±1.6時間後に135.85±18.02ng/mLの最高血清中濃度を示し、48時間後には血清中よりほとんど 消失していた。
(モーラステープ インタビューフォームより)

 

こちらも始めの4時間でかなり吸収されていて、8時間で定常状態となり
12時間で一度下がっていますが、16時間あたりから緩やかな濃度減少となっていますね。
(これはDDS製剤などの工夫によるものかもしれません。)

ロキソニンと違って、12時間で剥がしたわけではないので、
貼っていることで減少が穏やかなのか、それとも他に理由があるのかは分かりませんが
少なくとも、12時間で大きな山が終わっていることは分かります。

そのため、まあ12時間である程度吸収されているとは分かりますが、
剥がした後もロキソニンほどの効果の持続があるかどうかは分かりません。

 

もし12時間で剥がしていたら、もっと急激に濃度が下がるかもしれませんよね?

連続投与ではどうかというと
1日1回、つまり24時間ごとの貼り替えでプラトーに達していました。

 

ちなみに、XRのインタビューフォームはモーラステープの資料をそのまま使っていたため、XR自体の資料は確認できませんでした。

 

Noriko

このようにみると、

ロキソニンは明らかに1日1回でも、その半分の12時間も貼っておけば
効果は十分に期待できそうと言える一方で、

アドフィードは半分の6時間では十分な効果が期待できないと考えられます。

また、モーラステープはロキソニンと同じ1日1回でも、
12時間である程度吸収されているとはいえ、剥がしてしまった後の血漿中濃度はわからないため、
12時間で24時間とほぼ同じ効果が続くとは言い切れないと考えられますね。※

 

結局は実際に早く剥がした時のデータがないとなんとも言えないのが現状で、あれば話が早いのですが、
すみません、調べた中では見つからず・・・要は、早く剥がしても効果が持続するというよりは、
血中濃度のピークが早く、代謝も早い湿布の場合は
結局後半は貼ることで吸収されているわけではないから
さっさと剥がしちゃってもいいよね。
その方が、肌も休めるよね。
という話かなと思います。
(なので徐放技術を利用したテープ剤などは話が別ですね)
※これは私が調べた範囲でのことなので、
もしかしたら他にももっと有益な資料があるかもしれません
ご存知の方はぜひ教えてください🙇‍♀️

 

結論

☑︎1日2回は4~6時間程度
1日1回は10~12時間程度貼っておけば、

早めに剥がしてもある程度(もしくは十分)効果が期待できると言える

☑︎ただ、全ての湿布に対して同じことが言えるとは限らない。
ピークが早い薬ほど早めにが剥がしても効果に影響はないかもしれないが、ピークが遅い薬は早めに剥がしてしまうと十分な効果が得られないかもしれない。

とはいえ、ある程度目安として参考になると考えられる。

☑︎全く同じ効果ではないとしても、かぶれやすい方は
かぶれ予防のために早めに剥がすことは有益だと考えられる

☑︎かぶれが気にならない方は、あえて早めに剥がす必要はないと考えられる。

☑︎かぶれやすい方は、ピークに達する時間(Tmax)を考慮して
処方薬の変更を検討した上で、早めに剥がすのもありかもしれない。(効果が持続するかどうかはまた別)

☑︎個々の吸収・代謝から考えるのであればインタビューフォームなどを確認した方がいいかもしれない。

☑︎TDDSなど製剤に工夫がされている場合、
持続的に一定量の薬が移行するため、これもまた特殊な例として考える必要がある。

 

Noriko
全て用法によって一律
「○時間早めに剥がしていいですよ〜」
というアドバイスは
薬剤師的にはちょっと不十分かもしれないですね。

 

 

かぶれを予防するためのコツ

 

では、かぶれるのが問題ならば
他にかぶれを予防する方法はないのでしょうか?

一般的に言われていること
また今回分かったことなどをまとめてみます。

☑︎テープ剤よりも水分を含むパップ剤を選ぶ※1

☑︎クリーム、ゲル、ローションなどの塗布剤に変更してもらう

☑︎お風呂のタイミングで湿布を濡らしてからペロンと剥がす※2

☑︎剥がし方にコツがある
上に引っ張るように剥がさない※3

☑︎肌を休める時間を作る

☑︎保湿剤を塗る※4

☑︎ピークに達する時間が短いものを選び、早めに剥がす
(今回の検証で私が感じたこと)

※1 パップとテープの使い分けで
かぶれに対する使い分けについて記載していますのでよろしかったら
こちらの記事をどうぞ。
 ⇨パップ剤とテープ剤の使い分け
※2温湿布はお風呂のタイミングで剥がすとヒリヒリすることがあるので、
入浴30分~1時間ほど前に剥がすと良いとされています。
※3久光製薬さんの資料より

 

Noriko
なかなかめんどくさくてこのように剥がす人は少ないかもしれませんね。
でも、かぶれやすい方は毎回注意したいですね。

 

※4
保湿剤を使用した直後に湿布を貼ると剥がれてしまうので、
時間を置いて使用する場合に検討してみてください。
剥がれてしまう時は、湿布を貼る前に軽く肌を拭くといいですね。
(ゴシゴシ拭いてしまっては逆効果💦)

 

Noriko
というわけで、
気になったことをまとめてみました。なかなか全ての外用薬を把握するのは難しいですし、
医師もこのように説明している方もいることから、
回数を基準に目安としてアドバイスするのがいいかなと思います。少しでも参考になれば幸いです。
(今回はインスタのフォロワーさんからの質問がきっかけで学びました。
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