薬剤師のNorikoです。先日、パップ剤について書きましたが
今回は塗り薬について学んでみようと思います。
➡︎湿布って早めに剥がしていいと言うのはホント?
興味のある方はご覧ください。
今回はいわゆる鎮痛消炎効果を期待した
塗り薬について考えたいと思います。
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医療用の鎮痛消炎外用薬(塗薬)
痛み止めの塗り薬というと
・ゲル
・クリーム
・ローション(液)
が一般的かな〜と思いますが、
「1日数回塗布」
なんて書かれてて、
「何時間おきに塗ったらいいですか?」
と聞かれたことないですか?
また、患者さんの立場では
「1日数回って何回よ!?」
って疑問に思いますよね。
まあ、
その都度塗ってください。」
と言ったりすることも多いかと思いますが、
実際ずっと痛い方は
タイミングなんてわからないですよね・・・
厚く塗ったからいいというわけでもないし
ベタベタしたり
なかなか服が着れなかったりて困りますもんね。
塗ったらいいの〜?
ということについて調べてみました。
ではまた例をあげて、インタビューフォームを見てみましょう。
セクターゲル
こちらは成分がモーラスと同じケトプロフェンですね。
モーラスが貼り薬しかないのに対して
セクターはクリーム、液、ゲルと塗り薬しかありません。
これはこれで面白い😅
単回塗布
健康成人男子 5 名の背部(900cm2)へのセクターゲル 3% 10g、24 時間単回塗布において、投与 8 時間で最高血中濃度(246ng/mL)となった。
(セクターゲル インタビューフォームより)
⬇︎モーラスパップが12時間で最高血中濃度に達するのに比べて
セクターゲルは8時間なので若干早い感じですね。
濃度もパップよりゲル剤の方が高い数値になっています。
<モーラスパップ30の単回投与薬物動態>
ただ、代謝されるのはゲルの方が早いので、1日2回のモーラスパップよりも持続性がないことが分かりますね。
ちなみに、連続で使用した場合どうなるのかな?と調べてみたところ
14 日間連続塗布
健康成人男子 6 名の背部連続塗布試験(3.3g/300cm2/回、4 時間塗布×3 回/日、14 日間)におい て、第 1 日目の血中濃度は上昇したが、2 日目以降はほぼプラトーになり、94~173ng/mL の範囲 内であった。塗布終了後 72 時間後には血中よりほとんど消失していた。
(セクターゲル インタビューフォームより)
というわけで、1日3回で使用したところプラトーに達したということで
用法の1日数回は理想的には8時間おきに3回で効果が持続するという感じですね。
(まあ、体の部位や、塗った量によってはかなり差が出ると思いますが、目安としては、やはり3回でいいのではないかと思います。)
ナボールゲル
成分はジクロフェナクなのでボルタレンと同じ成分ですね。
健常成人男子と健常高齢男子(65歳以上)の腰背部(25×30cm2)に
ナボールゲル1%(ジクロフェナクナトリウム1%製剤)を塗擦し8時間適用 (8時間後に塗擦部位を拭き取り)したとき及び健常成人男子にジクロフ ェナクナトリウム錠(25mg)を経口投与したときの薬物動態パラメータ を下表に示す。経口投与との比較では血漿中濃度は極めて低く、体循環 血に移行する量は著しく低いことが示された。 高齢者においは、成人との比較でTmaxの遅延等の薬物動態パラメータ の変動が認められているが、経口投与との比較では同様に低濃度で、成 人との顕著な相違はないものと推察された。
(ナボールゲル インタビューフォームより)
こちらは用量によってピークの時間が異なりますが、
10〜14時間前後にピークがきていますね。
8時間であえて拭き取っているのに、その後も上がってるのが面白いけどなんでだろう?血漿にまで届くのに時間差があるのかな?
ちなみに、こちらは内服のジクロフェナク錠と比べているのもお面白いですね。
内服に比べてとても少ないのがわかります。
だから、相互作用の影響を受けにくいんですね。
ちなみに、こちらも連続投与で
8時間おきの使用で3日目にプラトーに達したそうです。
ゲルとテープ剤、効き目に違いはあるの?
ところで、ナボールはテープ剤があるので
せっかくなのでゲルとテープとで比べてみました。
健康成人男子に対してナボールテープ15mg(ジクロフェナクナトリ ウムとして0.673mg)またはナボールゲル22.4mgを5時間間隔で3回 反復投与(ジクロフェナクナトリウムとして0.672mg)し、投与開始 後12、16、20及び24時間の角質中ジクロフェナク濃度を測定した。 その結果、ナボールテープ15mgとナボールゲル1%は生物学的に同等と判断した。
ナボールゲル22.4mgというのがどのくらいかというと
1%なので2gちょっとですね。それを3回なので、全部で7g弱。
結構量的に少ないな〜と個人的には思うのですが、それでテープと同等性があったということのようです。
ということは、塗る量にもよってなんとも言えませんが、
まあ、何度も塗る余裕のある方は
塗り薬の方でいいんじゃない?
特にかぶれやすい方は、持続性を求めないのであれば
塗り薬にした方がいいですね。
ナパゲルン軟膏
ナパゲルン軟膏 3%:
ナパゲルン軟膏 3%を 10g(フェルビナクとして 300mg)、健常成人男子 6 例の背部に 単回塗擦し、塗擦 8 時間後に薬剤を除去したときのフェルビナクの血清中濃度は、塗擦 後 24 時間目に平均最高血中濃度 411ng/mL を示し、48 時間目に 90ng/mL まで減少し た(図 1)13)。
ナパゲルン軟膏 3%を 1 回 3.3g、1 日 3 回(フェルビナクとして 297mg/日)、5 日間反 復して健常成人男子 6 例の背部(同一部位)に塗擦し、各日の 3 回目の塗擦 4 時間後に 薬剤を除去したときのフェルビナクの血清中濃度は、2 日目以降平均血中濃度約 100~ 300ng/mL を示し、最終塗擦終了後 64 時間目に 48ng/mL まで減少した(図 2)13)
(ナパゲルン軟膏 インタビューフォームより)
こちらはなんと8時間で拭き取ったのに、
最高血清中濃度に達したのは24時間後でした。
ちなみに、ローションの資料もありましたが、
こちらも24時間後が最高血清中濃度でした。
ということは剤形ではなくて成分によるものでしょうか?
と思いきや、やっぱり1日3回の使用で大体2日目からプラトーに達しているため、あまり最高血中濃度に達する時間は関係ないのかな〜という感じですね。
それほど厳密に考えなくてもいいのかもしれません・・・
ちなみに、クリーム剤の資料はないかな?と思ったのですが、
なぜかゲル、または液剤のみしか見つからず
クリーム剤はそれらの中にひとまとめにされていました。
(全てを確認したわけではありません。)
どれくらい塗ったらいいの?
これは正確に教えて欲しいと言われると難しいですね。
添付文書通りだと「適量」とありますが
一番困る指示ですね💦
インタビューフォームには
検証に使った量が具体的に書かれていますが、
○gを○㎠に塗布と言われても
実際に使用する時には全く参考にならない・・・
まあ、そこまで気にする方はいないかと思いますが、
万が一とても気になってしまう方がいたら
そんな時は市販薬の記載を参考にすると分かりやすいです。
ボルタレン(ジクロフェナク)を例に挙げてみますね!
医療用のボルタレンゲルと
市販のボルタレンACゲルは同じ成分になります。
肩・肘・膝が2~3cm、
腰が3~5cmとなっています。
なので具体的な量を知りたいという方がいたら
こちらが参考になるかと思います。
とは言え、全ての医薬品について市販薬があるわけではないので
やはりあまり神経質にならずに、
ベタベタしない程度に塗り広げるのがいいかと思います。
※ちなみに、市販のバンテリンで使用する場合
目安の量はボルタレンの約倍の長さでした。
ではローションなどはどれくらい塗ればいい?
ローションなどの液剤は
のがいいようです。
○mlと言われても困りますもんね😅
ちなみに、クリーム、ゲル、ローションの塗り方のコツも確認したいと思います。
クリーム、ゲル、ローションの使い方のコツ(鎮痛消炎剤の場合)
ローションはそのまま塗り重ねればいいのですが、
クリームは擦り込んで白さがなくなるまでマッサージするのが良いとされています。
(注:これはNSAIDsの鎮痛消炎剤の場合になります。
一般的な医薬品のクリームは塗布になります。)
一方でゲルは
擦り込まずに、優しく伸ばすのがポイントです。
しばらくすると皮膜ができて、薬剤が浸透していくとのことです。
なぜか医療用の NSAIDsゲルは塗擦と書かれているものが多いですが
市販薬は刷り込む必要がないとされているものが一般的です。
(ボルタレンゲル、バンテリンゲル参照)
これを知らずに、ゲル剤を一生懸命擦り込んでしまうと
この皮膜がポロポロ落ちてくるなんてことになるので、基本的には
☑︎クリームは、擦り込む
☑︎ゲルは軽く塗り広げる
で覚えておくといいかと思います。
軟膏は擦り込んでOKです。
ただし、鎮痛消炎剤に限っての話になります。
(医療用は鎮痛消炎剤のゲルはどれも塗擦と書かれているようですが、全てにおいて確認したわけではありません。)
より成分が浸透するという結果が出ています。⬇︎
( maruho株式会社 「基礎からわかる外用剤」より)
なので、やはり目的や成分によっては擦り込んだ方がいいようですが、
擦り込むと摩擦で皮膚を傷めてしまうことがあるので、
擦り込み過ぎは良くないのと、
成分によっては擦り込む必要がないので
基本的に用法に、塗擦ではなく塗布と書かれているものは
軽く伸ばすだけにしておいた方がいいかと思います。
ちなみに、他に塗擦(擦り込む)と書かれている医薬品としては
☑︎ヒルドイド ソフト軟膏
☑︎ヒルドイド ゲル
☑︎ケラチナミンコーワクリーム
があげられます。
なぜか
☑︎ヒルドイド クリーム
は塗布(擦り込まない)となっており
ケラチナミンと同じ成分であるこちらに至っては
☑︎ウレパールクリーム
塗布してよく擦り込む(これって塗擦じゃん💦)
と記載されています。
面白いというかややこしいというか・・・
実はこの辺りはメーカー的にも厳密な使い分けはないと言っているところもあるそうな。(どこかは未確認)
薬剤師的にもあまり気にしていない方の方が多いのではないでしょうか?
とは言え、
鎮痛消炎剤の剤形による使い分けは、ちょっとした豆知識として知っておくのもいいのではないでしょうか?
結論!
NSAIDsの塗薬の使い方のポイント
- NSAIDsの外用薬
(軟膏、クリーム、ゲル、液剤)は1日3回で十分 - クリームは擦り込むように塗る
- ゲルは優しく塗り広げる(擦り込まない)
- 液剤は1回につき2~3回重ね塗りをする
そこを細かく説明しても返ってわかりづらいので
とりあえず回数を伝えればいいかなと思います。
3回以上塗ったらいけないの?
と聞かれたらなんと答えたらいいでしょうか?
局所的に作用する外用薬なので、
血漿中に吸収される量もとても微量です。
目安としては3〜4回です。」
(OTCでは具体的に3~4回塗布の用法が多いです。)
という方には貼り薬の方が持続性がありますね。
➡︎湿布って早めに剥がしていいと言うのはホント?
外用薬でも上限のある鎮痛消炎剤
全身に影響してしまうので、
そういった外用薬もあるということを押さえておきたいですね。
以上、鎮痛消炎外用薬の外用薬についてまとめてみました。
このような内容で薬剤師さん医療従事者さんに役に立ちそうな情報を、日々学んでインスタで投稿しています。
よろしかったらチェックしてみてくださいね!