禁酒を助ける処方薬ってどんなものがあるの?薬の特徴について薬剤師が解説

Noriko

こんにちは薬剤師Norikoです。

年末が近づき、コロナ禍とはいえ、
お酒を飲む機会も増えてきたのではないでしょうか?
今回はお酒が好きすぎて困っている方に
禁酒を助けるお薬についてサクッとまとめようと思います



薬でお酒がやめられる?

お酒は体に良くないとはいっても
付き合いで飲むことは多いでしょうし、
無理にやめる必要はないかと思いますが、

昼間から飲んでしまう

際限なく飲んでしまう

つまりアルコール中毒のようになってしまっていると
これは問題ですね。

そういう場合は薬でお酒を断つお手伝いとなるものがあります。

まずは、カウンセリングなどの精神療法や、断酒会への参加をはじめとする心理社会的治療が中心となりますが、

そこに処方箋薬を組み合わせることで成功率を高めることが期待できます

 

今現在(2021/11)における
いわゆるお酒をやめるために処方されるお薬は4種類

それぞれの特徴について見てみましょう。

 

 

抗酒薬

抗酒薬といわれるお薬は2つあります。

ジスルフィラム(商品名:ノックビン)

シアナミド(商品名:シアナマイド)

 

ちなみに、抗酒薬とは簡単に言うと

この薬を飲んでいる間にお酒を飲むと具合が悪くなる薬

になります。

具合が悪くなる薬なんて不思議ですね。

もう少し詳しくいうと、
お酒が飲めない人がお酒を飲むと具合が悪くなるというのと同じ原理で

アルデヒド脱水素酵素を阻害するため、その状態でアルコールを飲むと
体の中に有害なアセトアルデヒドが増え、そのアセトアルデヒドが分解されにくい状態なので、気持ち悪くなったり、頭痛がしたり、動悸がしたり、顔が赤くなったりするような状態になります。

よく、お酒が飲めない人が無理にお酒を飲んだ時と同じような状態になってしまうということですね。

 

シアナミドの方が即効性に優れ、効果が切れるのも早く、
ジスルフィラムの方が効果が現れるのには時間はかかりますが、効果は強いと言われています。

 

ジスルフィラムとして、通常、1日0.1~0.5gを1~3回に分割経口

維持量としては、通常0.1~0.2gで、毎日続けるか、あるいは1週毎に1週間の休薬期間を設ける

断酒療法:シアナミドとして通常1日50~200mgを1~2回に分割経口服用

節酒療法:飲酒者のそれまでの飲酒量によっても異なるが、酒量を清酒で180mL前後、ビールで600mL前後程度に抑えるには、通常シアナミドとして15~60mgを1日1回経口服用する。飲酒抑制効果の持続する場合は隔日に服用してもよい

 

本人が具合が悪くなるとわかっていれば、
お酒を飲む気にはならないだろうと思われるかもしれませんが、
「お酒を飲みたい!」という欲求を抑えるわけではないので、

つい誘惑に負けてお酒を飲んでしまったり、
具合が悪くなるのがわかってるので薬を飲まなくなってしまったりすることもあるようです。

そんなわけで、
しっかり薬を続けるという本人の意思や
周りのサポートも重要ですね。

 

飲酒欲求軽減薬

飲酒欲求軽減薬は1つです。

アカンプロサート(商品名:レグテクト)

こちらは上記の薬とは異なり

お酒を飲みたいという欲求を抑える効果がある薬

になります。

もし、この薬を飲んだ状態でお酒を飲んでも、
抗酒薬のように具合が悪くなるということはありません。

ただ断酒をしている人が服用すると断酒率が上がりますが、
お酒をのんでいる人が服用しても、その飲酒量を少なくする効果はないと言われており、中途半端に開始すると効果が期待できません。

また副作用として、特に下痢症状が起きやすいことが知られています。

 

アカンプロサートとして1回2錠、1日3回(なかなか大変ですね💦)
必ず食後に服用する必要があります。
(空腹時に服用すると副作用が出やすくなる)腸溶錠のため噛み砕いたりせずに服用する。

服用期間は原則的に6ヶ月(1年に伸びることもある)

飲酒量低減薬

飲酒量低減薬は1つです

ナルメフェン(商品名:セリンクロ)

こちらは2019年3月に発売された一番新しいお薬です。

お酒を飲みながらお酒の量を減らしていく薬

になります。

上記2つは断酒をして治療するのが基本ですが、
こちらはお酒を飲みながら徐々にお酒の量を減らしていくというお薬です。

ナルメフェン塩酸塩として1 回10mg を飲酒の1~2時間前に経口投与する。
ただし、1 日1 回までとする。
なお、症状により適宜増量することができるが、1 日量は20mg を超えないこと。

 

アルコール依存症に対しては最終的には断酒が一番の目標ではありますが、
軽度の依存症や、重度での中間的な目標として、お酒の量を減らしていきましょうとハードルを下げて使用できるお薬になります。

他のお薬はお酒を飲まない前提でお薬を基本毎日飲みますが、

こちらはお酒を飲む1~2時間前に必要時に服用するというものです。

なので、お酒を飲まないとわかっている時は薬も飲まなくていいですし、
飲むつもりなら、先に薬を服用しなければならないということですね。

 

 

Noriko

無理に断酒してもうまくいかなければ意味がないですし、
断酒による禁断症状も問題になってしまうことがあります。

それを防ぐために、まずは量を減らしていくのが目的ですね。

 

 

お酒を飲む前に薬を飲み忘れたらどうしたらいい?
気づいた時点ですぐに服用するが、お酒が飲み終わっていたら服用しない
どれくらいのお酒を飲む人が治療対象となる目安?
習慣的に多量飲酒が認められる患者の目安は、純アルコールとして1日平均男性60g超、女性40g超の飲酒量

アルコールの離脱症状ってどんなもの?

アルコール中毒は、中毒というだけあって、
簡単にやめることが難しい状態です。

というのも、急にやめた時に禁断症状も問題になるからです。

 

離脱症状にはこんなものがあります。

発汗、震え、不安、せん妄、てんかん発作など

 

アルコールへの依存が強い方は
離脱症状や、副作用、お酒から遠ざけるという意味でも
入院で治療を開始することもあります。

 

お酒をやめるために重要なこと

禁煙やダイエットでも同じことが言えると思いますが、

お酒をやめる時は本人の意思がとても重要です。
本人に全くやめる気がなかったり、
やめる準備ができていない状態で始めてもうまくいきません。

また、周りの協力も必要で、

薬を飲み忘れていないか、

近くにお酒が保管されていないか注意するのも重要ですし、

友人などは付き合いで飲みに誘わないなど

一人で戦うのではなくて、
周りの理解があってこそうまくいくのではないかなと思います。

 

Noriko
夢中になれるような趣味を見つけたり
普段から運動などをして、ストレスを溜めないようにするのも重要ですね。
本人や家族だけではなかなかうまくいかないこともあるかもしれません。

そういう時は心理療法や、

アルコール依存症者の自助グループなどへの参加

も考慮してみるといいと思います。

これらのグループは”AAグループ”や”断酒例会”などと呼ばれることがあり
全国各地に活動場所があるようです。

もし気になる方はお近くでそういったグループを探して
一緒に助け合うと心の支えになるかもしれませんね。

 

 

参考:厚生労働省e-ヘルスネット「アルコール依存症の薬物治療」
日経メディカル「飲酒前に服用する国内初の飲酒量低減薬」
依存症対策全国センター

 

 

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