市販されている鉄剤/貧血のお薬(医薬品)の違い

Noriko

こんにちは。
薬剤師Norikoです。

前回は医療用の経口鉄剤についてまとめましたが、
市販で買える鉄剤についてのご質問が多かったため
今回は市販薬について取り上げてみようと思います。

 

 

主要なOTC医薬品の鉄成分を比べると
医療用の
☑︎インクレミンの成分(溶性ピロリン酸第二鉄)
☑︎
フェルムの成分(フマル酸第一鉄)が多いようです。
鉄成分以外にも補助的な成分が
配合されているのが市販薬(OTC薬
)の特徴です

 

医師から処方される医療用の処方箋薬については前回の記事をご覧ください
⇨鉄剤の使い分け(貧血に使われる処方箋薬)

 

 

Noriko
市販で売られている鉄剤の医薬品は
現在どれも第二類医薬品となっています。
そのため薬剤師がいなくても登録販売者によって販売することができるお薬になります。

 

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ファイチ

成分は溶性ピロリン酸第二鉄
というわけで、医療用医薬品の『インクレミン』と同じ成分になります。

成分・分量 2錠中

溶性ピロリン酸第二鉄 79.5mg(鉄として10mg)
ビタミンB12 50μg
葉酸 2mg

鉄以外にも、貧血の原因となる
ビタミンB12,葉酸も配合されています。

この2つは他の鉄剤にもほとんど配合されています。

(鉄以外の成分については後で解説したいと思います。)

 

用法用量
・成人:1日1回、1回2錠
・8歳〜15歳未満:1日1回、1回1錠 食後

 

 

Noriko
子供も、大人も1日1回、服用錠数も少ないのが嬉しいですね。
また、成長期のお子さんがいるお家では
一緒に服用できるのもメリットですね。

 

 

マスチゲン錠


 

こちらもファイチと同じ溶性ピロリン酸第二鉄が使用され、
鉄の量も全く一緒
(と言うのもどちらも市販で配合できる最高量配合しているから)

成分・分量 1錠中

溶性ピロリン酸第二鉄 79.5mg(鉄として10mg)
ビタミンC 50mg
ビタミンE酢酸エステル 10mg
ビタミンB12 50μg
葉酸 1mg

ビタミンCとEも配合されています。
成分の効果については後述します。

 

用法用量
成人:1回1錠、1日1回 食後

 

Noriko

用法は他の鉄剤に比べると一番少ないですね。
1回1錠だけでいいのがポイントです。

 

ところで、
マスチゲンと言えは以前は『マスチゲンS』という製品がありました。
マスチゲンSの成分は『フマル酸第一鉄』

ではなぜ『溶性ピロリン酸第二鉄』に変更したのでしょう?

直接メーカーさんに聞いてみました。

 

以前のマスチゲンS錠の主成分は『フマル酸第一鉄』
剤形は糖衣錠で胃で溶けるお薬だったため、
胃の状態や他の食べ物により鉄の吸収に影響が出やすかった。現在のマスチゲン錠は主成分を変え、さらに腸溶錠のため、よりそれらの影響を受けにくく、吸収力を高めることで1日1回での用法を可能とした。
お茶やコーヒーなどの影響もより受けにくく、小ぶりな錠剤となった。

 

とのことです。

より吸収が良く、副作用も軽減されたとのことで
以前よりも改善されたお薬になります。

 

 

主成分が同じファイチマスチゲンならどちらがいい?

 

『ファイチ』と『マスチゲン』は
補助的に配合されたビタミンなど以外は大きな違いがありません。
どちらを買うか迷ったら

☑︎親子で服用したい⇨ファイチ

☑︎ビタミンなどの成分が多い方が良い⇨マスチゲン錠

 

という感じかなと思います。
ちなみに、お値段も1日あたり大きな違いはないようです。
若干ファイチの方が安いことが多い様子。

 

 

ちなみに、
マスチゲンはインクレミンシロップのように液剤があります。
ただ、成分はインクレミンと異なるため効果が同じとは言えません。

 

マスチゲンドリンク剤

クエン酸鉄アンモニウム 20mg(鉄として3mg)
グルコン酸カルシウム 1,000mg
ビタミンB2リン酸エステル 3mg
ビタミンB6 25mg
タウリン 800mg
L-アスパラギン酸カリウム 100mg
L-アスパラギン酸マグネシウム 100mg
ニコチン酸アミド 30mg
無水カフェイン 50mg

 

 

Noriko
配合されている成分が
いわゆる栄養ドリンクに配合されているものばかりなので、
鉄分も取りたいけれど疲れも取りたいな〜というときにちょうどいいですね。ただカフェインが入っているので、夜飲むのにはお勧めできません。

 

気になるお味はイチゴ味🍓(甘さ控えめ)
カロリー:31キロカロリー

 

 

また子供用の錠剤もあります。

子供用マスチゲン

 

 

 

成分・分量 1錠中

溶性ピロリン酸第二鉄 39.75mg(鉄として5mg)
ビタミンC 33.3mg
ビタミンE酢酸エステル 6.7mg
ビタミンB12 25μg
葉酸 500mg

成分内容は大人用と同じで量が少なめになっています。

 

 

Noriko
8歳から服用可能です。
こちらも大人用同様1日1回1錠のみで、
回数が少ないのが助かりますね。

 

 

エミネトン

 

1錠あたりの鉄分:29.61mg

他に比べて1錠あたりの鉄の量は多いですね。
ただ主成分が異なるのと、服用回数、錠数、共に多いです。

 

用法用量
・大人(15才以上)1回2〜3錠、1日2回
・7〜14才1回1錠、1日2回 食後

小児は他が8歳以上なのに対して、
エミネトンは7歳から服用可能です

 

 

成分・分量 1錠中

<内核>フマル酸第一鉄 90mg(鉄として29.61mg)
硫酸銅 0.35mg
硫酸コバルト 0.15ng
硫酸マンガン 0.05mg
<外核>ビタミンB6 3mg
ビタミンB12 10μg
ビタミンC 60mg
ビタミンE酢酸エステル 5mg
葉酸 1mg
銅クロロフィリンカリウム 1.66mg
銅クロロフィリンナトリウム 1.66mg

主成分は医療用医薬品の『フェルム』と同じですね。

ただ、フェルムは徐放製剤なのに対し、
こちらはそうではないようで、1日2回の服用が必要です。

また、他社が利用している溶性ピロリン酸第二鉄に比べて
胃での影響を受けやすいため、鉄分自体の配合量は多いのですが、
吸収に個人差が多く出そうです。

 

Noriko

先ほど書いたように、マスチゲンが”S錠”を販売していた頃、エミネトンと同じフマル酸第一鉄を使用していたのですが、

より吸収と副作用軽減のために溶性ピロリン酸第二鉄に変えたという経緯を考えると
エミネトンはちょっと遅れをとっているのでは?とも感じます。

ただ、硫酸銅、硫酸マンガンなどその他の補助的な成分も摂取したいという方にはいいかもしれません。

 

では、主成分の鉄以外の成分についてです。

主成分以外の成分の解説

それぞれ何のために配合されているのでしょうか?
多くの医薬品に配合されている成分についてまとめてみました。
ビタミンC

鉄分の吸収を高める

ビタミンE

赤血球の生成をうながす

ビタミンB6

赤血球のヘモグロビン合成をうながす

ビタミンB12 赤血球のヘモグロビン合成をうながす
葉酸

赤血球の生成をうながす

サトウ製薬エミネトン添付文書より

 

詳しく学ぶにはもっと奥が深いかと思いますが、
メーカーの解説ではこのようになっています。

 

ちなみに、エミネトンに配合されているその他の成分についてですが
このように解説されています。

硫酸銅

ヘモグロビンの合成を助けて貧血に効果をあらわす

硫酸コバルト

コバルトは骨髄で造血に不可欠なビタミンB12の構成元素

硫酸マンガン

糖質・脂質・たん白質の代謝に役立ち、エ ネルギーづくりに関与する

銅クロロフィリンカリウム
銅クロロフィリンナトリウム

胃粘膜を保護して、胃への負担をやわらげる

 

と言うわけで、
色々な方面から貧血の原因になりそうな不足をサポートしたり
副作用である胃症状を和らげる成分が入っていると言うことですね。

 

 

Noriko
ところで、
貧血貧血、と言っても
実際鉄不足かどうかは調べてみないとわからないですよね。市販では、貧血ではないか?
という予測のもと試してみることが多いかと思いますが、
もし効果が見られなかったり、
ますます悪化するようなら
すぐに受診して欲しいと思います。

 

☑︎以前鉄不足による貧血と診断されたことがある
☑︎鉄剤で改善したことがある

 

そんな方は試してみるといいかもしれませんね。ただ、貧血にも原因が色々ですし、
そもそも、貧血ではないかもしれないので
漠然と続けることは避けましょう。

 

医療用の処方箋薬については前回の記事をご覧ください
⇨鉄剤の使い分け(貧血に使われる処方箋薬)

 

 

医薬品とサプリメント

市販では医薬品とサプリメントの存在がありますが
これらは扱える成分が違います。

医薬品では医療用と同じ成分の商品もあり、
より安全性が確立されたものになります。

サプリメントはそこまでの試験をクリアしたものではないので
ものによっては品質の悪いものや
効果がはっきりしないものも含まれてしまいます。

 

Noriko
ただ、実は医療用(医薬品)の『非ヘム鉄』よりも
現在サプリメントとして出回っている『ヘム鉄』の方が
吸収が良く、副作用が少ないというデータもあり
今後このヘム鉄の存在がどうなるのか注目したいところです。

 

とは言え、処方箋薬は医師に処方されると保険が適応されるため低価格なこと、

臨床データが多く、
医師の管理の元、検査値と照らし合わせながら使われるので
安全性も高いですね。

ヘム鉄のサプリメントの場合、治療のためではなく
あくまで栄養補給になります。

そのため一般的に、メーカーの目安としての量では治療域としての量には及びません。

もし、十分量の鉄をサプリで摂りたいと言う場合は
医療用サプリメントを自費診療として販売しているクリニックもあるので
そういった医療用サプリメントを扱うクリニックに聞いてみるのもいいかもしれません。

ただ、保険が適応されないため高額にはなるかと思います。

それでも、おそらくしっかり検査をした上で医師の判断による販売になると思うので、
その辺りは安心かと思います。

 

 

 

 

番外編(キッチン用品で鉄補給)

 

Noriko
鉄を補給といえば、
鉄鍋などを使うというのも昔から知られていますね。
うちの実家では鉄の急須を使って毎日お茶を飲んでいました。そのおかげかどうかはわかりませんが、
私は鉄不足と言われたことがありません。

 

とはいえ、鉄のお鍋などは比較的高価なものが多く
重いし取り扱いも大変だったりしますよね。

そんな方にお勧めのものがあります。

こちら

 

なんと言っても可愛いですよね!

これをやかんや鍋に入れて
お湯を沸かしたり、料理を作ると自然と鉄分も補給できるというものです。

使った後はよく水分を拭き取っておけば錆びることもありません。

 

Q. 鉄はどれくらい補給できるの?

 

料理の内容や、煮込み時間などのかなり左右されるようですが、
鉄鍋などを使った実験で、
確かに数mgの摂取が可能とのデータがあります。

 

参考:「調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化」

 

ちなみにこれ、プレゼントなどでも喜ばれますよ!

特に貧血になりやすい妊婦さんへのプレゼントなどにぴったりだと思います。
多分他の方と被りません(笑)
(妊婦さんのプレゼントは好みなどがあるので難しいんですよね)

ノンカフェインのお茶なんかをあげることも多いのですが、
味に好みがあるので、微妙なことも。

これをあげたときはとても喜ばれました☺️

医薬品やサプリメントなどと違って
微量の鉄分が摂取できるため、過剰になる心配がありません。

なんと言っても、家族みんなで鉄分補給ができるし
長く使っていけるのが嬉しいですね。

 

 

Noriko
と言うわけで、
今回は市販薬としての鉄剤(&番外編)を取り上げてみました。個人的にはインクレミンの成分(溶性ピロリン酸第二鉄)で医療用(処方箋薬)でも錠剤を作ったら使いやすいんじゃないかな〜とか、ヘム鉄の医薬品もあったらいいな〜と思うのですが、なぜかありませんね。なんでだろう?
ご存知の方がいらっしゃったら教えてください。
ではでは。

 

 

 

 

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