今日は、痛風発作時の薬としてお馴染みの
コルヒチンについてまとめていこうと思います。
コルヒチンの特徴
コルヒチンは現在医療用で発売されているのは
意外にも1社のみ。
それも規格もたった一つになります。
分類:痛風治療薬
適応:痛風発作の緩解及び予防
家族性地中海熱
コルヒチンってこんな薬
●白血球,好中球の作用を阻止する
●鎮痛消炎作用はほとんどない
(強い消炎作用があるとの記事をよく見ますが、インタビューフォームには作用はほとんどないと書かれています)
●尿酸代謝にはほとんど影響しない
(尿酸値の変動に影響を与えないため、発作時に開始しても発作の悪化の心配がないのが尿酸値降下薬との大きな違い)
●作用持続時間:3~4時間
●腎機能に注意
(腎機能低下時は健常者と比べて半減期が4倍になることもあります。)
他の痛風治療薬との決定的な違い
一般的な痛風治療薬は尿酸降下薬として
大きく分けると2つに分類されます。
尿酸排泄促進薬 | 尿酸生成抑制薬 |
ドチヌラド(ユリス) ブコローム(パラミヂン) プロベネシド(ベネシッド) ベンズブロマロン(ユリノーム) |
アロプリノール(ザイロリック) トピロキスタット (ウリアデック/トピロリック) フェブキソスタット(フェブリク) |
これらのお薬は予防的効果はありますが、
発作に対する効果はありません。
それどころか、発作時に開始すると、急激に血清尿酸値が下がることで
関節内の尿酸塩結晶が関節腔内に剥脱しやすくなるため、関節炎が悪化、長期化することが知られています。
そのため、発作時には尿酸値降下薬の用量は変化させずに
刺激を与えないようにするのが一般的です。
尿酸値降下薬の開始時期は?
痛風発作が消失して2週間後くらいから開始し、徐々に増量していくのが良いとされています。
その他の治療薬
●尿酸分解薬として注射剤の
ラスブリカーゼ(ラスリテック)
●尿アルカリ化薬として
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物
(ウラリットーU/ ウラリット)などもあります。
コルヒチンは、なぜ発作時や予兆時に効果が期待できるの?
先ほど取り上げたように
一般的な痛風治療薬は発作時には使えません。
でも、コルヒチンはそれとは異なり
発作時の使用が推奨されています。
痛風発作はなぜ起こるのでしょう?
実は、発作のメカニズムを勘違いされている方が多いそうです。
その勘違いというのが、どうも
『尿酸値が高いと結晶ができ、
その結晶が棘のように神経を刺激するから痛みが出る』
というものなのですが、
実は激痛の原因は、尖った結晶が神経を刺激するのではなく、
何かの拍子に蓄積した結晶の塊から結晶の一部が剥がれ落ちた時、
それを異物と認識して、白血球(主に好中球)が一気に攻撃をするから強い炎症が起きると言われています。
(尿酸結晶が溜まり結節のようになっても発作を起こさないこともあります。)
というわけで、
コルヒチンの作用機序である
白血球,好中球の作用を阻止する
という作用が劇的に効果があるというのは納得ですね。
一番辛い発作時の主な薬物療法
コルヒチンで早めに白血球の働きを阻止することで
過剰な炎症反応を起こさないようにし、
NSANIDsとの併用(常用量の2~3倍使用するパルス療法)で、
起こった炎症を和らげて痛風発作を乗り切る形が一般的です。
この時、NSAIDsが無効の時や禁忌の時、またはあちこちに炎症が起きているような場合はステロイドを使用することもあります。
添付文書上の用法用量の不思議
コルヒチンの用法用量ってわかりづらいな〜と思っているのですが、
みなさんはどうでしょう?
まずは、痛風に対する基本の用法用量の確認です。
●痛風発作の寛解及び予防 1日3~4mgを6~8回に分服発病予防:1日0.5mg~1mg 発作予感時:1回0.5mg |
って思いません?
発作時は痛みが辛くて
多く飲みたくなりそうですが、それだと最高4mg服用することになりますね。
でも海外では意外にも日本より用量が少ないのです。
海外での用法用量
FDAからの用法用量について確認してみましょう。
痛風発作時 初日に0.6mgを3回(最高1.8mg/日まで)または 初日に1.2mg⇨1時間後0.6mg その後痛風が治るまで1~2回/日継続発作時は24時間以内に服用することが重要 |
一般的に、医薬品の用量設定は、海外の方が多いことがほとんどですが、
コルヒチンは珍しく用量は日本の方がだいぶ多いですね。
0.6mgというのはたまたま日本の規格が0.5mgなのに対し、
アメリカでは 0.6mgが一般的な規格だからのようです。
ちなみに、海外で最大量が1.8mgに設定されている理由は
下痢や腹痛の副作用が出るから
とのことです。
また、腎機能低下患者にも注意が必要です。
では、日本の添付文書をもう少し詳しく見てみましょう。
痛風発作には1回0.5mgを投与し 疼痛発作が緩解するまで3~4時間ごとに服用し、1日量は1.8mgまでにとどめることが望ましい |
日本での規格は1錠当たり0.5mgのみなので
1.8mgというのは現実的ではありませんね・・・
というわけで、実際は1日3錠までということになるでしょうか。
ってことは用法用量通りだと多過ぎですね。最大量を考えると1日3錠しか飲めませんけど・・・
高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインを見てみよう
急性痛風関節炎に対し発症12時間以内に1.0mg その1時間後に0.5mgを投与する 疼痛が残る場合は1日0.5~1.0mgをを継続し、疼痛改善と共に速やかに中止する。 高用量のコルヒチンは明らかに副作用が多いため使用しない |
高用量を使用すべきではないとなっていますね。ってことは、添付文書の用法用量を変えた方がわかりやすいんじゃないか?
と思うのは私だけでしょうか・・・
というわけで、
もちろん医師の指示通りになるかと思いますが、
患者さんに、具体的に聞かれた時に答える判断材料になるのではないかと思います。
コルヒチンカバーとは?
痛風発作が頻発する場合、
または尿酸降下薬の投与開始後に血清尿酸値の低下に伴う痛風発作が予想される場合に
コルヒチン1日0.5mgを連日服用させる方法です。
このコルヒチンカバーの使用期間についてですが、
ガイドラインには「3~6カ月間投与し、その後中止する」とあります。
この予防投与は必ずしも必要ではなく、
痛風発作が頻発している場合や慢性関節炎例では考慮すると良いとのこと
というわけで、漠然と長期投与が続いている場合は確認が必要ですね。
痛風以外の効能『家族性地中海熱』って?
地中海熱と聞くと
遠いヨーロッパの地中海の話かな?
日本では関係ないのかな?と思われるかもしれませんが、
もちろん日本でもみられる疾患で
指定難病にも指定されています。
病気の認知度とともに診断も増えているようです。
元々は遺伝子による疾患と思われていましたが、
現在では遺伝子だけでは解決できない例が出てきており
発症メカニズムは明らかになっていません。
症状としては突然の熱が半日~3日続き
4週間毎の間隔で発熱を繰り返すことが多く
漿膜炎による激しい腹痛や胸背部痛などもおきやすいとされています。
また、根治療法はなくステロイドは無効とされ、
発作の抑制にはコルヒチンが約90%で奏功すると言われています。
ただ無効の場合もあるため
まだまだ難しい疾患のようです。
無治療で炎症が反復するとアミロイドーシスを合併することがあると言われているため、
長期的にコルヒチンの使用となることが予想されます。
コルヒチンでは寛解状態を目指します。
適応外での使われ方
ベーチェット病
白血球の遊走能を抑える作用により約60%の症例に奏功するといわれている使用例:発作抑制に、コルヒチン0.5~1.5mg/日
心内膜炎
コルヒチンの併用は心膜炎再燃のリスクを約50%低下させるとし、
心膜炎の標準的治療としてNSAIDsと併用される。
使用例:0.5~1mg/日を3カ月間継続し、その後減量
その他”掌蹠膿疱症”などにも使用されます。
痛風発作と思い込みをせず、
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参考:コルヒチンインタビューフォーム&添付文書
難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/4448
東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター(リンク切れのため削除)
厚生労働省委託事業 Mindガイドラインhttps://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0052/G0000210/0022
日経DI2018年12月号(A)コルヒチンの連日服用を指示された患者https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/di/digital/201812/558984.html