温シップは本当に暖かくなるの?冬はやっぱり温湿布?

Noriko
こんにちは薬剤師Norikoです。
今回もよく聞かれることについてまとめてみたいと思います。
今日のテーマは温湿布。患部を温める湿布と言われていますが、
本当に温めるのでしょうか?についてです。



温シップって?

よく温湿布、冷湿布と言われますが、
一般的な名前は『温感パップ』、または『温感テープ』などと言われます。
つまり『温感』になります。
ちなみに、パップと言われるのは水分を含み厚みのあるようなタイプで、
ほとんどが白いタイプになります。
テープやプラスターは薄いタイプになります。
こちらは肌色である場合が多いですね。
以降は全て鎮痛消炎目的の貼り薬を湿布と記載します。
ところで温感タイプに含まれる成分は何でしょう?
温感タイプの湿布には以下の3つのどちらかの成分が配合されています。

①トウガラシエキス

②カプサイシン

③ノニル酸ワニリルアミド

これらは「痛みをとる」などの主成分とは異なり、
添加物として記載されていることが多いです。
これらの3つの成分の特徴は?
 『トウガラシエキス』の主成分が『カプサイシン』
カプサイシンから化学的に合成された成分が『ノニル酸ワニリルアミド』
というわけで、どれもトウガラシから作られる成分ということですね。

 

これらの成分は、皮膚の温感点を刺激することから温感タイプと呼ばれ、
慢性疾患あるいは腫脹緩解後の炎症性疾患に用いられるとされています。
カプサイシンが、全身に分布する感覚神経終末で細胞膜のバニロイド受容体TRPV1に結合し、神経細胞が脱分極し活動電位を発生することで、灼熱感を引き起こす。
バニロイド受容体TRPV1:カプサイシン、酸、熱などの侵害刺激を受容するイオンチャネル型受容体)

 

温感タイプはカイロのように暖かくなるの?

 

温感タイプのパップやテープはそれ自体が暖かくなるわけではありません。

皮膚の温感点を刺激することで脳に温かいと感じさせる効果があるとされており、
実際には温度に変化がなくても暖かく感じる効果が期待できます。

 

同じように冷感点を刺激するのが l-メントールや、ハッカ油などです。
これらは冷感刺激成分とされ、実際に患部を冷やす効果はありませんが、
脳が冷たいと感じることで清涼感が期待できるとされています。

 

また、パップ剤は冷感、温感ともに患部を冷やすこともあるとされています。

というのも、パップ剤は水分を含むため
その水分が気化する時に気化熱として患部から熱を奪うためです。

この作用を利用したのが『熱さまシート』などの商品ですね。

ただ、テープタイプやプラスタータイプは水分をあまり含まないため、そういった作用はありません。

 

冷却効果があるとはいえ、冷感パップも温感パップも
熱を冷ますと言われるシートほどの冷却効果はないようです。

また、冷感タイプも温感タイプも、患部の温度には影響しないという資料も多いです。

 

Noriko
お年寄りなどはカイロと同じように
貼れば暖かくなると思われている方が実際にいらっしゃいます。
なので、貼り薬はあくまで痛みや腫れを抑えるものである
ということをしっかりお伝えする必要が出てくる場合もあります。

温感タイプは患部を温める効果があるの?

先ほど、水分を多く含むパップタイプは
温感タイプでも冷却効果があるとお伝えしましたが、
これは貼った直後のことでそれが続くことはありません。
それとは別に温感タイプは患部の温度を上げる作用があるという資料もあります
1時間くらいで皮膚の温度は31℃から33℃、約2℃も上がる。
https://www.teikoku-pc.co.jp/column/column2.html
これは、トウガラシの成分の血管拡張作用によるもので、
血流が改善することにより、患部の温度が上がるというものです。
というわけで、温感タイプの貼り薬自体が患部の温度を上げるというよりも、
血流が良くなることで、生理的作用で局所的に体温が上がる作用が期待できるということですね。
Noriko
トウガラシのたくさん入った辛い食べ物を食べると
血行が良くなり、毛穴が開いたり、汗をかいたりしますよね。同じような作用が患部でも起きる可能性があるということですね。

実際のところ患部を温める作用はあるのかないのか

 

これは”ズバリ!”な回答は難しいようです(⌒-⌒; )

水分を多く含む製品の場合は、冷却効果により逆に若干ですが冷やしてしまうかもしれないし、

人によっては血流がかなり改善され、実際に患部の温度が上がることもあるかもしれません。

 

また、カプサイシンは刺激成分でもあるため、
患部が炎症を起こし、本当に熱を持ってしまうこともあります。

(この場合は副作用になるので、すぐに剥がした方がいいですね。)

 

ただ、実際に使用してみると
「ポカポカ暖かく感じる」という方は実際に多いので、

冬場はメントール系のスースー感じる湿布よりは使い勝手は良いかもしれませんね

 

Noriko
寒い時期に、ひやっとするのが苦手という方は
温感タイプを試してみるのもいいと思います。慢性痛の方は血流が改善することで冷感タイプよりも効果を実感できることがあります。

 

 

温感タイプで気をつけたいこと

ここで、温感タイプを使用する上で気をつけたいことと3つ挙げてみます。

 

①肌が弱い方は注意が必要

②お風呂に入る直前に剥がすとお風呂でヒリヒリしてしまうので
30分〜1時間前には剥がすようにする。

③温感タイプの上からカイロや、ホットカーペットなど発熱するものを当てると刺激が強まるので避ける

温感タイプにするために添加されたものは
全てトウガラシから作られた成分ということをお伝えしました。

つまり肌にとっては刺激物になります。

 

Noriko
冬はただでさ乾燥からかぶれを起こしやすい季節です。
そこに刺激作用の強い温感タイプを使用すると
より肌荒れを起こしやすくなります。

 

そのため、普段から貼り薬で被れやすい方や
乾燥肌などで、肌の状態があまり良くない状態で使用することはお勧めできません。

 

というわけで、温感タイプをお求めになっている方には
今まで温感タイプを使ったことがあるか?

肌はかぶれやすいことはないか?

などの確認をした方が良さそうですね。

ただ、今まで温感タイプを使っていて、
特に問題がなかった方には、それほど神経質になる必要はないと思います。

 

温感タイプのパップとテープはどちらがいい?

 

温感タイプを希望する方は
湿布によるヒヤッとした感じが嫌いな方が多いので、
パップタイプよりはテープタイプの方が冷たく感じることは少ないです。

ただ、一度貼ってしまい、肌に馴染んで仕舞えば
それほど違いは感じられないことが多いです。

また、薄いタイプのテープやプラスタータイプはパップよりもかぶれやすいと言われています。

そのため、かぶれやすいけれど温感タイプがいいという方には
まずはパップタイプを試してもらうのもいいかもしれません。

テープタイプとパップタイプの使い分けについてはこちら⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎

パップ剤とテープ剤の使い分けまとめ

 

温湿布なのにメントール配合?

ところで、トウガラシエキスなどの温感作用を示す成分と

メントールなどの冷感作用を示す成分が両方配合されているものがあります。

これはなぜでしょうか?

それはメントールに期待される効果を知ると納得できます。

 

l-メントールで期待できる効果
・清涼感・かゆみを緩和・消炎作用

温感タイプの貼り薬に少量配合されているのは
清涼感以外の効果

つまりかゆみの緩和や、消炎作用を期待しているものと考えられます。

そのため、いわゆる冷感湿布ほどのスースー感はないはずです。

同様にdl-カンフルなども冷感成分ですが、
痒みや炎症を抑える効果が期待できるとして、多くの貼り薬に添加されています。

またメントールが入っている方が
ジーンとした湿布独特の効いている感じが出るため配合されているということもあるそうです。

 

Noriko
確かに、鎮痛成分は効果が続いているのに
メントール感がなくなると、もう効いていないと思って
貼り替えってしまう方、実際に結構います。メントールのジーンとした感じがなくなっても
貼り替えるのは勿体無いので用法は守ってほしいなと思います。

 

では実際にどんな湿布が販売されているのでしょうか?

医療用温感タイプの貼り薬

まずは剤形から『パップ』と『テープ』に分けてご紹介します

温感パップ剤(サリチル酸メチル配合)

まずは昔からあるサリチル酸メチル

・MS温シップ「タイホウ」

・MS温シップ「タカミツ」

・ラクール温シップ

・ハーネシップ

どれも全て同じ成分です。
市販でも、昔から販売されており、鎮痛効果は比較的弱めです。
また独特の湿布臭さがあります。

これはサリチル酸メチルの匂いです。

というわけで、湿布独特の匂いが気になるという方はこの湿布は避けた方がいいかもしれません。

どれも後発品扱いで、先発がない医薬品になります。

温シップという名前が入ったものが多くてわかりやすいですね。
(ハーネシップだけ特殊で、そのような記載がないので注意です。)

どれも、トウガラシエキスが添加物としてではなくて有効成分として配合されています。

 

温感パップ剤(サリチル酸メチル以外)

・フェルビナクパップ「タイホウ」
鎮痛剤:フェルビナク
温感成分:トウガラシエキス(添加物として配合)

・フルルバンパップ
鎮痛剤:フルルビプロフェン
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド(添加物として配合)

・ラクティオンパップ
鎮痛剤:インドメタシン
温感成分:トウガラシエキス(添加物として配合)

 

温感テープ剤

・ロキソプロフェンナトリウムテープ「タイホウ」
鎮痛剤:ロキソプロフェンナトリウム
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド(添加物として配合)

・ロキソプロフェンナトリウムテープ「三友」
鎮痛剤:ロキソプロフェンナトリウム
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド(添加物として配合)

・ケトプロフェンテープ「ラクール」
鎮痛剤:ケトプロフェン
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド(添加物として配合)

 

市販で買える温シップ

昔からあるサリチル酸メチル、サリチル酸グリコールを除き、
比較的新しく、効果がしっかり目の成分を中心にご紹介します。

 

鎮痛剤:インドメタシン1%
温感成分:トウガラシエキス
その他:アルニカチンキ
バンテリンの温感タイプはもう一つ種類がありますが、
こちらは新しく出たタイプで、
血行促進効果のあるアルニカチンキが配合されています。
剤形の特徴としては、パップ剤ですが、テープ剤のような剥がれにくさがあり、
さらに貼る時に失敗してくっついてしまっても、湿布同士は剥がれやすいという特徴があります
また主成分は一般的に医療用のインドメタシンパップよりも濃度が濃い1%※です。
(一般的な医療用パップ剤はは0.5%、テープ剤は3.5%ですが1枚あたりの有効成分はパップもテープも同じ70mgです)
※実際にテープ1枚に対して膏体が何g使用されているかの記載がないので、
1枚あたりの実際の有効成分の量は分かりません。
インドメタシン:3.5%
温感成分:トウガラシエキス
その他:l‐メントール
こちらはプラスタータイプです。
医療用プラスタータイプ(テープタイプ)と同じ濃度の3.5%※です。
パップタイプより薄く小さく、肩などこりや痛み使いやすいタイプです。
メントールも配合されていますが、プラスタータイプのためひんやり感は少ないです。

これは冷感効果ではなく、
かゆみを緩和・消炎作用や、効果実感を期待した配合だと考えられます

 

※実際にテープ1枚に対して膏体が何g使用されているかの記載がないので、
1枚あたりの実際の有効成分の量は分かりません。

【第2類医薬品】フェイタス5.0温感(大判サイズ) 20枚

主成分のフェルビナクは、医療用のパップタイプと同じ濃度(5%)※が配合されています。

フェルビナク:5%
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド
その他:トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)
l-メントール

さらにトコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)の配合もあるため
より血行改善効果が期待できます。

こちらもl-メントールが配合されていますが、
これも冷感効果ではなく、
かゆみを緩和・消炎作用や、効果実感を期待した配合だと考えられます

 

※実際にテープ1枚に対して膏体が何g使用されているかの記載がないので、
1枚あたりの実際の有効成分の量は分かりません。

こちらは薄いプラスタータイプです。
目立ちにくく、伸びが良く、剥がれにくいのが特徴です。
フェルビナク:3.5%
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド
フェルビナクの濃度は3.5%でパップ剤に比べると少ないと感じるかもしれませんが、
こちらの製品は膏体の量の記載があり、
実際1枚あたりに配合された量は医療用のパップと同じ70mgになります。
シンプルな配合で医療用に近い使い心地だと思われます。
メントールの配合がないので匂いも気になりません。

 


【第2類医薬品】ロイヒ膏フェルビ コンパクト 24枚

フェルビナク:5%
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド

こちらも上記のパスタイムと同じような配合ですが濃度的にはこちらの方が高濃度※となっています。

またメントールの配合がないので、臭わないということもポイントになっています。

※実際にテープ1枚に対して膏体が何g使用されているかの記載がないので、
1枚あたりの実際の有効成分の量は分かりません。

 

【第2類医薬品】ロイヒ膏ロキソプロフェン大判 7枚

ロキソプロフェン:8.1%
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド

医療用の先発で言うと有名なロキソニンですね。
こちらもメントールなどの冷感成分、匂い成分の配合がないため
冷やっと感や、匂いが気になる方にも人気の市販薬です。

※実際にテープ1枚に対して膏体が何g使用されているかの記載がないので、
1枚あたりの実際の有効成分の量は分かりません。

 

ジクロフェナク:2%
温感成分:ノニル酸ワニリルアミド
その他:l-メントール

こちらもフェイタスシリーズですが、
実は主成分は異なりフェルビナクではなく、ジクロフェナクになります。
医療用では先発としてボルタレンで知られる成分ですね。
Noriko
ジクロフェナクが2%配合されていますが、
医療用の元祖ボルタレン(ジクロフェナク)は1%なので医療用より濃度が濃い※です。
冷感成分であるl-メントールも配合されていますが、
こちらも冷感効果ではなく、

かゆみを緩和・消炎作用や、効果実感を期待した配合だと考えられます

 

※実際にテープ1枚に対して膏体が何g使用されているかの記載がないので、
1枚あたりの実際の有効成分の量は分かりません。
Noriko
ちなみに同じ成分の場合、
湿布の強さは成分の濃度によって表されたりしますが、
基材によってももちろん濃度は変わりますし、
実際は何枚使ったかによっても薬の吸収は変わってくるので
濃度は若干の違いはあまり気にしなくていいと思います。医療用も同じ成分で数字が違うのは
ほとんどが、単に湿布の大きさが違うだけです。

 

 

※例えばモーラステープ20mgと40mgは
テープ自体は同じで大きさが40mgの方が2倍になっているだけです。
つまり20mgを2枚貼れば40mgと同じになるので、どちらが強いというわけではありません。

市販薬は濃度の記載があっても1枚あたりの膏体の量の記載がないものが多く、
実際に1枚あたりどれくらいの有効成分が配合されているのかわからないものが多いです。そのため濃度だけを見ても比べることは難しいです。
それでも、医療用を基準として作られていると考えられるので、逸脱して少ない、多いということはないと思われます。

 

 

Noriko

と言うわけで、サクッと温感タイプについてご紹介しましたが、
温感タイプがあるものはほぼ温感ではないタイプも存在します

肌が弱い方、ひんやりしたものを使いたい方は
同シリーズで温感ではないものを探してみてください。

 

 

こんな感じで、
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