
こんにちは
薬剤師のNorikoです。
今回は新しめのお薬
オレキシン系の睡眠薬について
学んでみたいと思います。
『ベルソムラ』と『デエビゴ』どんな仕組み?
オレキシン受容体(OX1及びOX2受容体)への結合を可逆的に阻害する ことにより、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させ、睡眠を誘発する(ベルソムラ適正使用ガイドより)
催眠鎮静作用により眠らせるのに対して
より自然な睡眠に近いとされています。
それぞれのメリットとデメリットについて簡単にまとめたいと思います。
オレキシン受容体拮抗薬は2つ
現在日本で処方が可能なオレキシン系は2つになります
☑︎ベルソムラ(スボレキサント)
☑︎デエビゴ(レンボレキサント)
どちらも新しいお薬ですが、
デエビゴの方がより新しいお薬になります。

昔から使われているベンゾジアゼピン系との比較をしてみたいと思います。
ベンゾジアゼピン系との比較
ベンゾジアゼピン系(BZ系)の睡眠薬にはこんなお薬があります。
作用時間によって4つに分けられますが代表的なお薬のみ挙げてみます
超短時間型 | ハルシオン(トリアゾラム) |
短時間型 | レンドルミン(ブロチゾラム) リスミー(リルマザホン) エバミール/ロラメット(ロルメタゼパム) |
中間型 | ユーロジン(エスタゾラム) ベンザリン/ネルボン(ニトラゼパム) サイレース(フルニトラゼパム) |
長時間型 | ドラール(クアゼパム) ダルメート(フルラゼパム) |
睡眠薬を飲まれたことがある方は
見覚えのあるお薬があるかもしれないですね。
これらは今でもとてもよく使われる睡眠薬になりますが、
メリットとデメリットについて確認してみましょう。
ベンゾジアゼピン系の特徴<メリット>
- 作用時間によって使い分けができる
⇨入眠障害には短時間型、中途覚醒には中間型、長時間型など - 効き目が比較的シャープ
- 抗不安作用を併せ持つ
- ジェネリック医薬品がたくさんあるので薬剤料を抑えられる
- 使用経験が多いため、エビデンスがたくさんある
ベンゾジアゼピン系の特徴<デメリット>
- ふらつき、転倒の原因になりやすい(筋弛緩作用による)
- 中止によるリバウンドが起きることがある
⇨減量は慎重にする必要がある - 呼吸器系や緑内障などへの影響が出やすい
⇨禁忌疾患が多い - せん妄、認知機能への影響が心配されている
- 依存性がある
- 処方日数制限があるものがほとんど
(これはデメリットというより安全性の面で必要ですけどね。
患者さんにとってはデメリットになりそうですね。)
ベンゾジアゼピン系の筋弛緩作用は
せっかく眠ったけれどトイレに起きてしまった時など
ふらついて転んで骨折なんてことになりかねません。
また、睡眠薬としてではなく、抗不安薬として分類されるBZ系のお薬もありますね。
一度飲み始めたらやめられないと思っている方もいらっしゃいます。
徐々に減量することで
お薬を止めることができますが
これがないと眠れない!と思われる方が実際には多いように感じます。
また、最近ではせん妄について話題になっていますね。

どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか?
オレキシン系睡眠薬の特徴<メリット>
- ふらつき、転倒が少ない
- 薬が効きにくくなる耐性がほとんどない
- 中止によるリバウンドがほとんどない
- 呼吸器や緑内障への影響が少ない
(禁忌となる疾患が少ない) - せん妄など認知機能への影響が少ない
- 依存性も極めて少ない
- 入眠障害だけでなく、中途覚醒にも効果がある
- 向精神薬に分類されず、処方日数制限がない

もちろんデメリットもあります。
オレキシン系の特徴<デメリット>
- 短時間型ベンゾジアゼピン系に比べると持ち越しがある
(翌日の日中に眠気が出ることがある) - 入眠時のシャープさに欠ける
(これも短時間型のBZ系と比べた場合) - 悪夢の副作用が出ることがある
- 抗不安作用がない
- 併用薬禁忌によく使われる医薬品がある
- ジェネリックがまだないため薬剤料が高い
- まだ新しいお薬なので使用経験などはBZ系に比べると少ない

安全面のことを考えると
長期的にはオレキシン系の方が安心かなと思います。
とは言え、そもそも効かないのであれば意味がないので難しいですね。
オレキシン系の注意点
やはり医薬品ですのでもちろん注意点もたくさんあります。
その注意点についてまとめてみたいと思います。
ベルソムラの注意点
用法用量を確認しましょう
[用法用量]
通常、成人にはスボレキサントとして1日1回20mgを、
高齢者には1日1回15mg を就寝直前に経口投与する。
高齢者での薬物動態試験において、非高齢者と比較して血漿中濃度が高くなる傾向があったため15mgと設定されたそうです。
なかなか効かないという方がいますが
実際、最高血中濃度に達するのがBZ系の短時間型のお薬と同じくらいなんですね。


Tmax:約1. 0~1. 5時間
一番効果が出る最高血中濃度に達するのは早いため
就寝直前となるようです。
『併用禁忌』
強いCYP3A阻害の作用を持つお薬とは禁忌になっています。
・イトラコナゾール(イトリゾール)
・クラリスロマイシン(クラリス /クラリシッド)
・ボリコナゾール(ブイフェンド)
・リトナビル(カレトラ/ノービア)

何と言ってもクラリスロマイシンは厄介ですね。
これは日々目にする処方薬だと思うのですが、
お薬手帳に記録がなかったり、
普段は服用していなくても、短期的に服用することはよくあるので
毎回併用薬の確認が必要ですね。
また、逆に、クラリスロマイシンの処方があった時は
合わせて何か睡眠薬を服用していないかどうかの確認も必要ですね。
併用時に用量調整が必要な薬
併用禁忌ほどではないですが、
ただの注意ではなく、具体的に用量調整が必要とされるお薬があります。
用量を10mgへ減量を考慮する必要ある
どんなものがあるかと言いますと
結構な数がありますので全てではないですが一例はこちらになります
・ジルチアゼム(ヘルベッサー)
・べラパミル(ワソラン)
・フルコナゾール(ジフルカン)
必ずしも必須というわけではないようです。
(ベルソムラ製品基本 Q&Aより)
ベルソムラ副作用
次に気になるのは副作用ですが
主な副作用はこちらです。
ベルソムラの主な副作用
傾眠(4. 7%)、頭痛(3. 9%)、疲労(2. 4%)
頭痛や疲労は気になるところですが、
傾眠は副作用でもあり主作用でもありますよね。
ただ、短時間型のBZ系などに比べると半減期が長いので
効果を持ち越してしまう可能性があるのは問題ですね。
日中も眠くなるようなら見直す必要があるかもしれません。
副作用『悪夢』
この副作用は特徴的ですね。
意外にこれが原因で服用中止になることがあるので調べてみました。
こちらは実際にはどのくらいの頻度になるのでしょうか?
プラセボ群:0.3%
医薬品リスク管理計画(RMP) 適性使用ガイドより
1人(服用しないプラセボ群)ということなので
もっと大きなデータじゃないと実際のところはわからないんじゃないかな〜と感じます。
十数人投薬した中で、すでにこの副作用を訴えられた方が2人いるからです。
(あくまで私の感覚なので実際はわかりません。)
フォロワーさんの数に対してその副作用に出会った方が多かったのです。
奥様を亡くされたばかりで心配事が多く不眠になられた方でした。
心理的影響も大きいのではないかなと感じます。
一包化不可
一包化ができないというのはネックになりますね。
これだけハサミで切って貼り付けたり
患者さんも飲み忘れてしまったりする可能性がありますよね。
デエビゴの注意点
こちらもまず用法用量を確認しましょう
[用量用法]
通常、成人にはレンボレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日1回10mgを超えないこととする。
こちらもベルソムラ同様、用法が就寝直前ですね。
また高齢者用の用量設定がありませんが、上限の設定があります。
デエビゴ併用禁忌・注意
ちなみに、ベルソムラには併用禁忌がありましたが
ただ、併用注意のお薬はたくさんあります。
CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤と併用する場合は
1日1回2.5mgとする。
(RMP資材:市販直後調査2020/7~2021/1)
どんな薬が含まれるかと言いいますと
イトラコナゾール、クラリスロマイシン等 になります
というわけでベルソムラ同様、
強いCYP3A阻害の作用を持つお薬とは相性が悪いということですね。

ここは特に注意が必要ですね!
併用のお薬に関しては禁忌がありませんでしたが、
疾患についてはどうでしょう?
デエビゴは『重度の肝障害がある患者』は禁忌となっています。
ただ、ベルソムラも重度の肝障害のある患者ではベルソムラの血中濃度が高くなってしまうため注意が必要とされています。
では次は副作用についてみてみましょう。
デエビゴ副作用
傾眠 95 例(10.7%)、頭痛 37 例(4.2%)、倦怠感 27 例(3.1%)
こちらもベルソムラと同様ですね。
ただ、ベルソムラよりも傾眠の%が倍以上で高いですね。
これは、半減期が関係しているのかなと思います。
デエビゴの方が持ち越しが若干多いかもしれないので注意ですね。
副作用[悪夢]
ベルソムラで気になった副作用、悪夢ですが
デエビゴはどうでしょう?
頻度を見てみましょう
(エーザイHP:デエビゴQ&A No:15070より)
プラセボについてはわかりませんでしたが、
一包化可能
ベルソムラが一包化が不可だったのに対して
デエビゴは一包化OKです。
これは高齢者の方の薬の管理にとても有利ですね。
ベルソムラ・デエビゴ共通[食事の影響]
この二つは食事による影響があるのですが、
実際どれくらいの影響があるのでしょうか?

(ベルソムラインタビューフォームより)
デエビゴ食事による影響
(デエビゴインタビューフォームより)
ちょっとわかりづらいかと思いますが、
どちらも食後に服用することで最高血中濃度になるまでの時間が大幅に遅れているのがわかります。
デエビゴに至っては時間だけではなく最高血中濃度自体もかなり低くなってしまい、
せっかくの効果が十分現れないということがわかりますね。

そうとは限りませんよね。帰宅が遅い方は帰ってお風呂➡︎食事➡︎寝るこんな方もいらっしゃるので、
就寝直前だから大丈夫とは言えません。なので、食事から寝るまでどの程度の時間が開くか
投薬時に確認する必要があるかなと思います。もちろんがっつり食べなくても晩酌もダメですね💦
はっきりした時間の指定はないのですが、
目安として、どちらも2~3時間は開けて欲しいとのことです。
というわけで最後にサクッとまとめたいと思います。
オレキシン系睡眠薬のまとめ
まずは共通点についてまとめます。
BZ(ベンゾジアゼピン)系との比較も確認します。
オレキシン系睡眠薬の共通点
- BZ系よりも安全性が高いと言われている
・ふらつき・転倒など筋弛緩作用による危険が少ない
・薬が効きにくくなる耐性がほとんどない
・中止によるリバウンドがほとんどない
・呼吸器や緑内障への影響がほとんどない
・せん妄など認知機能への影響がほとんどない
・依存性も極めて少ない - BZ系のような抗不安作用はない
- BZ系のような入眠時のシャープさには劣る
- 半減期が長いので翌日に持ち越すことがある
- 『悪夢』という特徴的な副作用がある
- 食事による影響があるため空腹時に服用する必要がある
- CYP3Aを阻害薬による影響が大きい
- 処方日数制限がない(向精神薬ではない)
ベルソムラとデエビゴそれぞれの特徴
- ベルソムラには併用禁忌薬がある
(デエビゴには併用禁忌薬はないが注意) - デエビゴには禁忌疾患がある
(ベルソムラは禁忌ではないが注意) - ベルソムラは一包化不可
(デエビゴはOK)

オレキシン系の睡眠薬について学びました。
また気になったお薬について
まとめていきたいと思います!
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