調剤時に薬剤師を悩ませるモンテルカスト「トラップに引っかからないで!」

Noriko

今回はモンテルカストのアレやコレということで、

調剤時に意外に注意点の多いモンテルカストについてまとめてみます。

 

 



モンテルカストトラップ

 

Noriko

トラップというと変な感じですが、

モンテルカストって監査する上で他のお薬とは違う視点で
注意することがいくつかあるんですよね。

用法用量、規格、剤形をしっかり確認しないと
うっかりしてしまうようなトラップがあります💦

 

ちなみに、モンテルカストの先発品は

『キプレス』『シングレア』ですが、

併売品となっており、中身は同じです。

 

トラップ❶ [生物学的同等性の違い]

 

処方:モンテルカストOD錠5mg: 1錠 就寝前

の処方があった時

ODはないけど、チュアブル錠ならある!
まあ、どちらも水無しで飲めるし規格も同じだから変更しちゃおう!

 

と思うかもしれませんが、

それはダメです!

 

キプレスインタビューフォームより抜粋 
モンテルカストフィルムコーティング錠とモンテルカストチュアブル錠は生物学的に同等でないことから、モンテルカストチュアブル錠 5 mg をモンテルカストフィルムコーティング錠 5mg の代わりにアレルギー性鼻炎の治療に用いないこと。

 

つまり、普通錠とOD錠は変更が可能ですが、

普通錠とチュアブル錠は生物学的に同じとはいえないということは

OD錠とチュアブル錠も生物学的に同じとはいえないため変更が不可

となります。

 

Noriko
と言いますか、その前に適応症から考えてもアウトなのです

 

トラップ❷ [適応症の違い]

モンテルカストは剤形や年齢によって適応症の制限があります。

全ての規格、剤形について比べてみましょう。

 

☑︎モンテルカスト錠5mg, 10mg, OD錠5mg, OD錠10mg

〈気管支喘息〉
通常、成人にはモンテルカストとして10mgを1日1回就寝前に経口投与する。
〈アレルギー性鼻炎〉
通常、成人にはモンテルカストとして5〜10mgを1日1回就寝前に経口投与する。

つまり、これらはどちらも成人に使われるものです。
ちなみに、OD5mgは先発品にはありません。

 

☑︎モンテルカストチュアブル錠5mg

〈気管支喘息〉
通常、6歳以上の小児にはモンテルカストとして5 mgを1日1回就寝前に経口投与する。

 

☑︎モンテルカスト細粒4mg

〈気管支喘息〉
通常、1歳以上6歳未満の小児にはモンテルカストとして4mg(本剤1包)を1日1回就寝前に経口投与する

 

というわけで、
そもそも、モンテルカストOD錠5mgは小児にも気管支喘息にも適応がありません。
また、大人にもアレルギー性鼻炎にしか適応がありません。

だからそもそもOD錠は気管支喘息の子供には使えません。

 

トラップ❸ [変更調剤の可否]

変更調剤をする上で、
類似する別剤形の場合、条件を満たせば変更することが許されていますが、

 

チュアブルとOD錠は類似する別剤形とみなして良いのか?
答えは、基本的には❌です。
Noriko
基本的にはというのは、地域的に?
OKとされる可能性があるところもあるようで、
こればっかりはなんともいえません。

ただ、概ね、今回のような生物学的同等性がないようなこともあるので
疑義が必要と思っておいた方がいいでしょう。

ちなみに、チュアブル錠として存在する薬剤はそんなにありません。

2022年4月現在では成分としてはたったの4つです

●モンテルカストチュアブル錠

●ピートルチュアブル錠

●ホスレノールチュアブル錠

●デノタスチュアブル錠

そもそも、まだ先発品しかないものも多いので
それほど変更調剤で悩むことはなさそうですね。

 

トラップ❹ [食事の影響]

就寝前のお薬は、薬の特徴以外にも

食事の影響も考慮したお薬があります。

 

例えば、眠剤の『デエビゴ』や『ベルソムラ』は
もちろん眠りを助けるために就寝前(直前)なのですが、

食事の影響も受けやすいという理由もあります。

こちらについては以前記事を書きましたのでよろしかったらご覧ください⬇︎⬇︎⬇︎

『ベルソムラ』『デエビゴ』新しい睡眠薬

 

Noriko
ではモンテルカストはどうでしょうか?
食事の影響もあるでしょうか?

 

 

モンテルカストは成分は同じでも剤形によって食事の影響が若干異なるようです。
とはいえ、基本的には食事に関係なく服用できます
剤形によって?ってどういうこと?
インタビューフォームの食事の影響をじっくり見てみましょう。
☑︎モンテルカスト普通錠(フィルムコーティング錠)
食後と空腹時の有意差が見られなかったとあるため
ほとんど食事の影響を受けないと考えて良いようです。
(和食と、海外での軽食など食事内容によって影響は若干異なるようです)

☑︎モンテルカストチュアブル錠、細粒

食後の方が最高血中濃度に達する時間が遅れたり
吸収への影響が見られたとあるため、若干の効果の減弱が予想されます。

 

Noriko

食事の影響から考えられることは

大人用の薬は、あまり食事の影響を考えなくてもいいけど
子供用の薬は食事によって効果が下がる可能性があるから
やっぱり特に子供はできるなら食後は避けた方がいいかもしれない。

ということかな?と思います。

 

実際は、大きな影響ではないのでどの剤形も食事に関係なく投与可能です。
あくまで参考程度にお考えください

 

就寝前じゃないといけないの?

 

これは特に気管支喘息の場合は就寝前が理想だといえます。

というのは、このお薬は毎日続けて服用していても
定常状態に達しません。

 

Noriko

定常状態になる薬とは、
薬効発現に一定以上の血中濃度の維持が可能な薬のことで、
一日中ある程度効果が保たれた血中濃度を保つことができるので、
例えば1日1回の薬の場合、1日のうちいつ服用してもいいですよ、というお薬が多いです。

 

では、モンテルカストは定常状態になるでしょうか?

 

定常状態になるかならないかを計算する方法があります。

投与間隔時間 ÷ 消失半減期

3以下・・・定常状態になる
4以上・・・ 定常状態にならない
3<○<4・・・グレーゾーン

ではモンテルカストはどうでしょう?
投与間隔時間:24
消失半減期:約4.1時間
24 ÷ 4.1≒ 5.8 > 4
というわけで4以上になるため定常状態にはならないということがわかります。
だから、1日を通して、血中濃度(効き目)に波があるということですね。

 

 

Noriko
ここで重要なのは
モンテルカストチュアブル錠の適応症が気管支喘息であるということです。

 

気管支喘息は一般的に明け方悪化しやすいことで知られています。
ということは、できるだけ明け方にお薬が効いてほしいわけですが、
モンテルカストの血中濃度が一番高くなるのは約4時間後です。
また、半減期が4時間程度と短いため、タイミングによっては効いてほしい時間にお薬が代謝されてしまう可能性があります。
お子さんだと9時くらいには就寝するでしょうか?
その場合、就寝前の服用では、最高血中濃度になるのは約午前1時
そこから半分になるのが約午前5時
この辺りでは十分効果が期待できそうです。

 

 

でも、もし夕食時の例えば午後7時くらいに服用したとしましょう
最高血中濃度になるのは約午後11時
そこから半分になるのが約午前3時
というわけで、微妙に早まってしまうんですね。

 

 

Noriko
これがもし、1日1回いつでもいいですよ。
なんて言ってしまうと、喘息発作予防としてはしっかり機能しないかもしれません。

 

 

逆にいえば、アレルギー性鼻炎の場合は
就寝前にこだわる必要は本来ないのかもしれませんね。
とはいえ、夜中に鼻が詰まって息苦しいという方は
やっぱり就寝前の服用がいいのかもしれません。

というわけで小児の服用タイミングについてのまとめ

モンテルカストの小児への使用は
効能は気管支喘息のはずなので、明け方にしっかり効いてほしい。また、子供用のモンテルカストは若干食事の影響を受けるので夕食後すぐの服用はあまりお勧めできない。以上のことからやっぱりできれば就寝前が良さそう

 

 

 

モンテルカストでよく聞かれること

虫歯の心配について

就寝前に服用させなさいと言われても、
歯磨き終わってるのに、お菓子のような甘い薬を飲ませるなんて

虫歯が心配なんだけど?

 

これはチュアブル錠の処方が出た親御さんからよう聞かれる質問です。
これについてはズバリ

虫歯の心配はほとんどありません
先発品も、後発品も
使われている甘味料はどれも虫歯の原因にならないものばかりです。
その多くはアスパルテームですが、
後発品はメーカーによっていくつか異なる甘味料を使っています。
それでも、どれも虫歯の原因にはならない甘味料です。

 

Noriko
というわけで、
食後の歯磨きをちゃんとしていれば、
モンテルカストチュアブルのせいで虫歯になるという可能性はほとんどないと言われています。

 

 

とはいえ、歯の溝に残ったまま寝てしまうというのも気持ち悪いので、
お子さんが歯磨きできそうならした方が気持ちいいかもしれないですね。
ただ、とても眠そうなのに、無理やり就寝直前に歯磨きをさせるというのは難しいと思うので
そこまでして歯磨きさせる必要はないということですね。

モンテルカスト注意点をさくっとまとめ

 

☑︎年齢による剤形に注意!
(1~5歳:細粒 6~14歳:チュアブル錠
☑︎年齢による適応症の違いに注意
(小児:気管支喘息のみ 成人:気管支喘息+アレルギー性鼻炎)
☑︎チュアブル錠とOD錠はお互いに変更できない
☑︎剤形によって食事の影響が異なる
(小児用はちょっと食事の影響を受けやすい)
☑︎定常状態にならないので、一番効いてほしい時間が重要

 

 

 

Noriko
というわけで、
今回はモンテルカストに注目してみました。
トラップがいくつかあるので
一度しっかり把握して注意したいお薬です。

 

 

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