ネフィー点鼻液とは?エピペンとの違い・使い方・調剤の注意点まとめ【薬剤師の学び】
「エピペン®しかなかったアナフィラキシーの補助治療に、注射ではなく“点鼻”という新しい選択肢が加わりました。国内初のアドレナリン点鼻製剤です。
この記事では、
- ネフィー®とは何か
- 作用機序
- 用法用量
- エピペン®との違い
- 有効性データ
- 副作用
- 調剤・服薬指導のポイント
を、添付文書・PMDA承認情報・RMP資材・PubMed掲載論文などの一次情報をもとに、できるだけわかりやすくまとめました。
※本記事は2026年7月時点の情報です。医薬品情報は改訂されることがあるため、実際の処方・調剤にあたっては必ず最新の電子添文をご確認ください。
① なぜネフィー®が処方される?

「ネフィー」って薬、聞いたことありますか?



はい。点鼻タイプのアドレナリン製剤ですよね。
エピペン®しか選択肢がなかったところに、針を使わない新しい選択肢が出てきたって話題になっていました。
アナフィラキシーは、急速に進行し、時に死に至ることもある重篤な全身性の過敏反応です。第一選択薬はアドレナリンですが、国内でこれまで承認されていた補助治療剤はエピペン®(筋肉内注射)のみでした。
注射という投与経路のハードルから、
- 自己注射への抵抗感
- 使用のタイミングを逃してしまう といった課題が指摘されており、**「使用の躊躇による治療の遅延」**がアナフィラキシー診療における大きな課題の一つとされてきました(詳しくは③でも触れます)。
ネフィー®点鼻液は、この「注射が必要」というハードルを取り除いた、国内初のアドレナリン点鼻製剤です。
② ネフィー®とは(基本情報)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名 | ネフィー®点鼻液1mg/2mg |
| 一般名 | アドレナリン |
| 製造販売元 | アルフレッサ ファーマ株式会社 |
| 効能又は効果 | 蜂毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療(アナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人に限る) |
| 承認日 | 2025年9月19日 |
| 薬価収載日 | 2025年11月12日 |
| 販売開始 | 2026年2月 |
| 規制区分 | 劇薬・処方箋医薬品 |
| 有効期間 | 24ヵ月(室温保存) |



エピペン®と同じ「補助治療剤」って位置づけなんですね。



ネフィー®はあくまで“補助的”な緊急処置薬。
使用後は必ず医療機関を受診する必要がある点はエピペン®と同じです。処方後も治療の第一選択が変わるわけではないようですね。
③ 作用機序(アドレナリンの働き)
ネフィー®もエピペン®も、有効成分は同じ**アドレナリン(エピネフリン)**です。投与経路が「点鼻」か「筋注」かの違いであり、体の中で起こる薬理作用そのものは共通しています。
- α1受容体刺激 → 血管収縮 → 血圧上昇
- β1受容体刺激 → 心収縮力増強・心拍数増加
- β2受容体刺激 → 気管支拡張、炎症性メディエーターの遊離抑制
ネフィー®は、界面活性剤のドデシルマルトシド(DDM)を配合することで、鼻粘膜からのアドレナリンの吸収性(バイオアベイラビリティ)を高める設計になっています。



点鼻でもちゃんと全身に効くんですね。



はい。日本人健康成人を対象とした薬物動態試験では、ネフィー®2mg投与後、投与後20分(中央値)で血漿中アドレナリン濃度がピーク(Cmax平均814pg/mL)に達することが確認されています。
また海外データでは、ネフィー®2mgとエピペン®(アドレナリンAI)0.3mgの単回投与を比較したPK/PD試験も実施されており、鼻腔内投与でも全身に薬理作用が及ぶことが確認されています。
④ 用法・用量
通常、体重30kg未満の患者には、アドレナリンとして1回1mgを、体重30kg以上の患者には、アドレナリンとして1回2mgを鼻腔内に投与する。 ―ネフィー®点鼻液 電子添文(2026年2月改訂)
- 1mg製剤は原則、体重15kg以上の患者に使用します。体重15kg未満の患者への1mg製剤投与は過量投与のおそれがあり、通常のアドレナリン注射液の使用も含めて慎重に判断することとされています(⑨で詳しく解説します)。
- 効果不十分な場合は、1回目投与から10分以降を目安に2回目投与が可能です。2回目は1回目と同一鼻孔への投与が望ましいとされています(これは、反復投与試験の投与間隔条件・PKデータに基づく推奨です)。



体重で用量が変わるのはエピペン®と同じ考え方ですね。



そうですね。ただしエピペン®は0.15mg/0.3mgの2規格、ネフィー®は1mg/2mgの2規格と、体重区分の数値も含め対応関係が異なるので、混同しないよう注意が必要ですね。
⑤ エピペン®との比較
| 比較項目 | エピペン® | ネフィー®点鼻液 |
|---|---|---|
| 投与経路 | 筋肉内注射(大腿部) | 鼻腔内投与(点鼻) |
| 規格 | 0.15mg/0.3mg | 1mg/2mg |
| 用量選択の目安 | 15kg以上0.15mg/30kg以上0.3mg | 15kg以上30kg未満1mg/30kg以上2mg |
| tmax(中央値) | 8.00分(外国人データ、0.3mg) | 30.0分(外国人データ、2mg単回) |
| 承認(国内) | 2011年 | 2025年9月19日 |
| 薬価 | 0.15mg:9,672円/0.3mg:10,197円 | 1mg:22,975.3円/2mg:24,672.1円 |
| 剤形の特徴 | 針一体型自己注射器 | 針を使わない噴霧式スプレー |



薬価だけ見るとネフィー®の方がかなり高いですね…



そうですね。まあ、新しい剤形なので。
ただ単純比較には注意が必要です。
海外データではネフィー®2mg単回投与のCmax(481pg/mL)はエピペン®0.3mg(612pg/mL)よりやや低い一方、tmaxはネフィー®の方が遅い(30分 vs 8分)という結果が出ています。
「効果発現の速さ」で見ればエピペン®の筋注に分があるとも読めるデータですが、それでも“注射への抵抗感で使用を躊躇してしまう”よりは、確実に・早いタイミングで投与できることの臨床的意義の方が大きい、というのがネフィー®開発の背景にある考え方です。
💡 なお、直接ネフィー®とエピペン®の有効性を比較したランダム化比較試験は実施されておらず、上記は薬物動態(PK)データに基づく比較です。臨床的な有効性の優劣を直接示すものではない点にご留意ください。
⑥ 有効性データ(国内第Ⅲ相試験)
ネフィー®の有効性・安全性は、食物経口負荷試験(OFC)でアナフィラキシーガイドライン2022に基づくグレード2以上の症状を誘発した6〜17歳の患者15例を対象とした国内第Ⅲ相試験で検討されました(Ebisawa M, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2025;13(10):2787-2794)。
主要評価項目(投与15分後、または15分以内に代替治療が行われた場合はその前の最終評価時点での主症状の改善率):
| ネフィー®1mg(6例) | ネフィー®2mg(9例) | 合計(15例) | |
|---|---|---|---|
| 主症状の改善率 | 83.3%(5/6例) | 66.7%(6/9例) | 73.3%(11/15例) |
- 15分以内に追加のアドレナリン治療を必要としなかった患者:15例中15例
なお、15例中1例(6.7%)は、いったん症状が改善した後、投与2時間45分後に頭痛・呼吸困難等の二相性反応(biphasic reaction)を発症し、最終的に筋注アドレナリンでのレスキュー投与が必要となりました。
海外(欧米)ではより大規模な薬物動態・忍容性試験の蓄積があり、needle-free(針不要)であることが服薬(投与)アドヒアランス向上につながる可能性が、複数の海外文献で指摘されています。
ただし「使用の遅延・躊躇の解消につながる」という主張は、主に薬物動態的な考察や海外のアンケート調査に基づくものであり、国内での実臨床データはまだ限定的です。
⑦ 副作用
重大な副作用(頻度不明)
- 肺水腫
- 呼吸困難
- 心停止
その他の副作用(頻度不明)
| 部位 | 症状 |
|---|---|
| 鼻腔 | 鼻部不快感、鼻粘膜障害、鼻腔内感覚鈍麻、鼻痂皮、鼻痛、鼻漏、鼻閉 |
| 呼吸器 | 咽喉刺激感、咳嗽、口腔咽頭不快感・痛、咽頭感覚鈍麻 |
| 循環器 | 動悸、頻脈、血圧上昇、心拍数増加、胸内苦悶、不整脈、顔面潮紅・蒼白 |
| 精神神経系 | 頭痛、振戦、浮動性めまい、不安 |
| 消化器 | 口の感覚鈍麻、悪心、嘔吐 |
| 皮膚・過敏症 | そう痒症、過敏症状等 |
国内第Ⅲ相試験では、主な副作用として振戦(20.0%)、**鼻粘膜障害(13.3%)**が報告されています。



鼻腔特有の副作用(鼻粘膜障害・鼻痛など)が出るのはネフィー®ならではですね。
エピペン®の副作用(循環器・精神神経系症状など)と共通する部分も多いですが、投与経路に由来する局所症状は説明時にきちんと伝えておきたいポイントです。
⑧ 使用のタイミング・患者指導ポイント
添付文書上の使用時期の目安
- 初期症状が発現し、ショック症状が発現する前の時点
- 過去にアナフィラキシーを起こしたアレルゲンを誤って摂取し、明らかな異常症状を感じた時点
患者さん・保護者への説明が特に必要な項目
- 1回使い切りの製剤であること(試し噴霧・再使用は不可)
- 鼻腔内投与専用(他の投与経路には使用しない)
- 効果不十分なら10分後以降に同一鼻孔へ2回目投与が可能
- 使用後は必ず救急要請+医療機関受診(ネフィー®はあくまで補助治療であり、根本治療ではない)
- 使用済み・未使用にかかわらず、医療機関へ持参・提出する



「注射より簡単そう」だからこそ、逆に自己判断で使うタイミングを誤らないような説明が大事そうだね。



ネフィー®は処方にあたって医師の
「処方医師登録(オンライン講習受講)」が必須で、流通管理下に置かれています。
また処方時には「大切なお知らせサービス」
(使用期限の約1か月前に通知)への登録案内も、調剤時の重要な指導ポイントの一つですね
⑨ 薬剤師として押さえておきたい注意点
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 交感神経作動薬に対し過敏な反応を示す患者 — アドレナリン受容体が本剤に対し高い感受性を示すおそれがあ
- 体重15kg未満の患者への1mg製剤投与は、原則想定されていません(4歳未満・15kg未満を対象とした臨床試験は未実施)。救命を最優先した上で、患者ごとに慎重な判断が必要とされる領域であり、疑義照会の対象になり得るポイントです。
- 妊婦には投与しないことが望ましいとされています(胎児の酸素欠乏、分娩第二期遅延のおそれ)。
- 併用禁忌:イソプレナリン・ノルアドレナリン等のカテコールアミン製剤、アドレナリン作動薬(蘇生等の緊急時を除く)
- 併用注意が多岐にわたります(ハロゲン含有吸入麻酔薬、MAO阻害薬、三環系抗うつ薬、SNRI、抗ヒスタミン薬、非選択性β遮断薬、血糖降下薬、利尿剤など)。併用薬の多い患者への処方では要確認です。
- 動脈硬化症・甲状腺機能亢進症・糖尿病・重症不整脈・精神神経症・コカイン中毒・鼻の解剖学的異常のある患者は、緊急時を除き投与を避けるべき対象として添付文書に明記されています。
- 鼻茸・鼻骨折・鼻損傷の既往、鼻の手術歴がある患者では吸収が不十分になる可能性があり、他の投与経路のアドレナリン製剤を考慮するとされています。
- 本剤は心筋酸素需要を増加させるため、心原性ショックや出血性・外傷性ショック時の使用は避けることとされています。
⑩ まとめ
- ネフィー®点鼻液は、国内初のアドレナリン点鼻製剤として2025年9月19日に承認されたアナフィラキシー補助治療薬
- 有効成分・作用機序はエピペン®と同じアドレナリンだが、投与経路が「注射」から「点鼻」へ
- 用法用量は体重30kg未満で1mg、30kg以上で2mg
- 国内第Ⅲ相試験(15例)での主症状改善率は73.3%(試験規模の限界には留意)
- 副作用は循環器・精神神経系症状に加え、鼻腔局所の症状が特徴的
- 体重15kg未満・鼻の解剖学的異常・妊婦などは投与判断に注意
- あくまで「補助治療剤」であり、使用後の医療機関受診は必須という点はエピペン®と変わらない



「針が要らない」という手軽さが注目されがちですが、薬剤師としては、あくまでアドレナリン製剤としての基本(適応・用法用量・禁忌・使用後の受診の必要性)を押さえた上で、患者さんに寄り添った説明ができるようにしておきたいですね。
今日の内容が明日からの服薬指導のヒントになれば嬉しいです!


参考文献・情報源
- ネフィー®点鼻液1mg・2mg 電子添文(アルフレッサ ファーマ株式会社、2026年2月改訂第2版)
- ネフィー®点鼻液 医薬品リスク管理計画(RMP)適正使用ガイド(PMDA掲載)
- Ebisawa M, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2025;13(10):2787-2794.
- エピペン®注射液0.15mg・0.3mg 電子添文(ヴィアトリス製薬)
- 日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」
- KEGG MEDICUS 医療用医薬品情報(ネフィー、エピペン)
- 日経メディカル処方薬事典(ネフィー点鼻液、エピペン注射液)
免責事項:本記事は一次情報に基づく情報提供を目的としており、診断・治療・服薬指導の代替ではありません。医療従事者の方は、必ず最新の添付文書・インタビューフォームでご確認のうえご判断ください。一般の方は自己判断で薬の選択・服用・中止をせず、必ず医師・薬剤師にご相談ください。体調に異変があれば速やかに医療機関を受診してください。本記事の情報利用により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。








