ジクトルテープ・ロコアテープ枚数制限がある貼付剤の比較[薬剤師向け]

ジクトルテープ・ロコアテープ枚数制限がある貼付剤の比較

この記事について
ジクトルテープとボルタレンテープ(ジクロフェナクナトリウム)、ロコアテープとゼポラステープ(フルルビプロフェン系)。それぞれ「同じ成分」を含みながら、1日の貼付枚数制限や適応症が大きく異なります。この記事では、各薬剤の添付文書(電子添文)等の一次情報に基づき、なぜ同じ成分なのに枚数制限や適応症が違うのかという背景を掘り下げます。対象読者は薬局実務に携わる薬剤師で、疑義照会や患者説明にそのまま使える知識としてまとめています。情報は2026年7月時点で確認できる最新の添付文書に基づいています。


ジクトルテープとボルタレンテープって、どっちもジクロフェナクナトリウムですよね。
ロコアテープとゼポラステープも同じフルルビプロフェン系のはずなのに、なぜ枚数制限や用法など使い方が異なるんでしょうか。

確かに、この違いは気になりますよね
同じ成分なのに、使い方が異なる医薬品は色々ありますが
今回はよく見る貼付剤について触れてみようと思います。

目次

1. ジクトルテープ vs ボルタレンテープ

まずは含有量と適応症を比較表で整理します。

項目ジクトルテープ75mgボルタレンテープ15mg/30mg
有効成分ジクロフェナクナトリウムジクロフェナクナトリウム
含有量75mg/枚15mg または30mg/枚
適応症①各種がんにおける鎮痛 ②腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱鞘炎等の鎮痛・消炎
用法用量がん疼痛:1日1回2枚(150mg)、症状により3枚(225mg)まで増量可
その他:1日1回1〜2枚(75〜150mg)
1日1回1〜2枚を患部に貼付
貼付部位胸部・腹部・上腕部・背部・腰部・大腿部(患部でなくてもよい)患部
1日の枚数上限3枚添付文書上、経口剤換算での明確な上限記載なし(局所使用が前提)

ジクトルテープは、久光製薬が持っている経皮吸収技術(TDDS)を使って、ジクロフェナクを効率よく全身の血中に届けられるように設計されています。
だから貼る場所も「痛いところ」である必要がなくて、胸部でも腹部でもいいことになると思います。

じゃあボルタレンテープは、そもそも全身にはあまり吸収されない設計なんですか?

吸収自体はゼロではないようですが、含有量も少ないですし、全身性の鎮痛効果を狙った設計ではなく、あくまで患部の炎症を抑える局所的な製剤という位置づけのようですね。
だからこそ、適応症も「変形性関節症」「腱鞘炎」のような局所の炎症性疾患に限定されているんですね。

なぜジクトルテープは枚数上限が「3枚」なのか

ジクトルテープの「3枚※を超えないこと」という制限、これはどこから来ているんですか?

※「がん疼痛のみ3枚まで/腰痛症等は2枚まで」

添付文書に明記があって、3枚貼付時の全身曝露量が、ジクロフェナクナトリウム経口剤の通常用量投与時と同程度に達することが根拠になっています。
つまり「これ以上貼ると、飲み薬の通常用量を超えるのと同じことになる」という安全域として設定されているようです。

なるほど……。ということは、ジクトルテープはもう「貼るタイプの飲み薬」に近い感覚で考えたほうがよさそうですね。

まさにそういう発想で開発されたようですね。
もともと、がん疼痛に使えるNSAIDsは注射剤や坐剤など限られた選択肢しかなく、経口が難しい患者さんに投与する手段が限られていました。
そこで「貼るだけで経口剤と同等の全身作用が得られる」ことを目指して開発されたのがジクトルテープ、という経緯があるようです。
だから禁忌項目も消化性潰瘍・重篤な血液異常・重篤な肝腎機能障害など、経口NSAIDsと同じレベルの厳格さになっているんですね。


2. ロコアテープ vs ゼポラステープ・ヤクバンテープ

続いてフルルビプロフェン系の貼付剤を比較します。ゼポラステープと同じラセミ体フルルビプロフェンの貼付剤として、トクホン製のヤクバンテープも加えて整理します。

項目ロコアテープゼポラステープ20mg/40mgヤクバンテープ20mg/40mg/60mg
有効成分エスフルルビプロフェン(S体のみ)40mg+ハッカ油フルルビプロフェン(ラセミ体:R体+S体)フルルビプロフェン(ラセミ体:R体+S体)
適応症変形性関節症の消炎・鎮痛肩関節周囲炎、筋肉痛、腱炎、腱鞘炎、テニス肘、変形性関節症、外傷後の疼痛および腫脹(幅広い局所疾患)変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、テニス肘、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛(ゼポラスとほぼ同範囲)
用法用量1日1回、患部に貼付1日2回、患部に貼付1日2回、患部に貼付
1日の枚数上限2枚(同時に2枚を超えないこと)添付文書上、経口剤換算での明確な上限記載は確認できず添付文書上、経口剤換算での明確な上限記載は確認できず

ゼポラステープとヤクバンテープって、成分も適応症もほとんど同じに見えるんですが、これは同じ薬と考えていいんですか?

そうですね、どちらもラセミ体のフルルビプロフェンを使った局所貼付剤で、適応症の範囲もほぼ重なっていると思います。
ゼポラスとヤクバンは販売元は異なりますが、設計思想としては同じカテゴリーの薬と考えてよさそうです。
現場的には、どちらが処方されていても大きな考え方の違いはなくて、在庫や採用の都合で選ばれていることが多いんじゃないかと思います。

なるほど、ロコアテープだけが仲間はずれな感じがしてきました。

ロコアテープだけが、S体だけを取り出して吸収効率を上げるという、一段違う設計思想で作られているんですね。
ここがこの後の話の重要なポイントになってくると思います。

ロコアテープは「エスフルルビプロフェン」で、ゼポラステープやヤクバンテープは「フルルビプロフェン」……名前が似てますけど、これは別の成分と考えていいんですか?

実はフルルビプロフェンには、鏡に映したような関係にあるR体とS体という2つの形(光学異性体)が存在していて、薬効のほとんどはS体が担っているんです。
R体の効果はS体の1000分の1程度しかないと言われています。
ロコアテープは、このS体だけを取り出して製剤化したのが「エスフルルビプロフェン」ということになります。

じゃあゼポラステープは、効果の薄いR体も一緒に入ったままなんですね。

ゼポラステープは古くからあるラセミ体(R体+S体が半々)のフルルビプロフェン製剤で、局所の炎症を抑えることを主眼とした、いわば従来型の設計ですね。
一方ロコアテープは、S体だけに絞ることで経皮吸収効率を高めて、あえて全身性の鎮痛効果を狙って設計された、比較的新しいタイプの貼付剤なんですね。
さらに、ハッカ油が添加されていますが、これも吸収を助ける成分として知られています。

ハッカ油は、ただスースーさせるためじゃなかったんですね。
ちなみに、こちらは上限が2枚となっているのはジクトルテープと同じような理由ですか?

そうですね。
添付文書には、2枚貼付時の全身曝露量がフルルビプロフェン経口剤の通常用量投与時と同程度に達すると明記されています。

なぜロコアテープは適応症が「変形性関節症だけ」なのか

ロコアテープが経口薬と同じくらいの全身曝露量になるなら
患部以外の痛みにも効きそうな気がするんですが……。

効くかどうかという薬理作用の話と、その用途で使ってよいかという承認上の適応症の話は別ですね。
ロコアテープが承認を取るときの臨床試験は、変形性関節症の患者さんを対象に実施されていて、その集団でしか有効性・安全性が確認されていないんですね。
だから、たとえ全身に吸収されて薬理学的な効果が期待できたとしても、腰痛症のように試験対象になっていない疾患には、承認された適応症として使うことはできないという整理になると思います。

なるほど……「全身に吸収される=どんな痛みにも使える」ではないんですね。

「経口剤と同程度の曝露」の経口剤とは、具体的にどんな薬なのか


さっきから「フルルビプロフェン経口剤の通常用量と同程度」という表現が出てきますが、具体的にはどの薬のことを指しているんですか?

日本ではフロベン錠がありますね。
フルルビプロフェンの経口薬で、添付文書を見ると、通常成人は1回1錠(40mg)を1日3回、つまり1日120mgを食後に服用する用法になっているんですね。

ロコアテープ2枚で、そのフロベン錠と同じくらいの血中濃度になるということですね。

そういうことみたいですね。
ちなみに、フロベン錠の適応症は、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、歯髄炎、歯根膜炎の鎮痛・消炎、となっています。

血中濃度としては同じくらいになるけどボルタレンテープとジクトルテープの関係同様、ロコアテープとは異なりますね。

3. 枚数制限の考え方を横断的に整理する

ここまで聞いて、なんとなく共通するパターンが見えてきた気がします……!
全身作用を狙って設計された薬剤ほど、枚数制限が「経口剤と同等の曝露量」を基準に決められている、ということですか?

そういう理解でいいと思います。
整理するとこんな感じになりそうですね。

薬剤設計思想枚数制限の根拠
ジクトルテープ全身作用を意図(TDDS技術で高含有量を吸収)3枚で経口剤通常用量と同程度の曝露に達するため
ボルタレンテープ局所作用が中心添付文書上、経口剤換算の明確な上限記載なし
ロコアテープ全身作用を意図(S体単離で吸収効率UP)2枚で経口剤(フロベン錠等)通常用量と同程度の曝露に達するため
ゼポラステープ / ヤクバンテープ局所作用が中心(ラセミ体)添付文書上、経口剤換算の明確な上限記載は確認できず

全身への吸収を前提に設計された薬剤は、経口剤と同等のリスク(胃腸障害・腎障害など)を考慮して枚数の上限が明確に定められているんですね。
逆に局所作用中心の薬剤は、そもそも経口剤と同列に比較する必要がないので、そういう記載自体が出てきません。

ボルタレンテープとゼポラステープ/ヤクバンテープについては、添付文書に「経口剤と同程度」という記載が見当たらなかったんですね。

局所作用が前提の製剤なので、そもそもそういう評価軸で試験されていない可能性が高いですね。

4. 禁忌事項のまとめ

同じ成分で、同じ外用薬でも禁忌に関しても
結構違いが見られます。
ここは薬剤師としてしっかり把握しておきたいところです。

ボルタレンテープ vs ジクトルテープ

禁忌事項ボルタレンテープジクトルテープ
本剤の成分に対する過敏症
アスピリン喘息(既往含む)
消化性潰瘍
重篤な血液の異常
重篤な腎機能障害
重篤な肝機能障害
重篤な高血圧症
重篤な心機能不全
妊婦又は妊娠している可能性のある女性
トリアムテレンとの併用○(併用禁忌)

ゼポラステープ vs ロコアテープ

禁忌事項ゼポラステープロコアテープ
フルルビプロフェン製剤に対する過敏症
アスピリン喘息(既往含む)
消化性潰瘍
重篤な血液の異常
重篤な肝機能障害
重篤な腎機能障害
重篤な心機能不全
重篤な高血圧症
特定のニューキノロン系抗菌剤(エノキサシン・ロメフロキサシン・ノルフロキサシン・プルリフロキサシン)投与中○(併用禁忌)
妊娠後期の女性

最後に、現場で実際に確認しておきたいポイントをまとめてみます

  • ロコアテープが筋肉痛・肩こり等で処方されていたら要確認。
    適応症は変形性関節症のみ。全身に吸収されるからといって他の痛みへの適応外使用を見過ごさない。
  • ジクトルテープは「痛いところに貼る」薬ではない。
    貼付部位の指定(胸部・腹部・上腕部・背部・腰部・大腿部)を守っているか確認し、患者にも「患部じゃなくていい」ことを説明する。
  • ジクトルテープ・ロコアテープは経口NSAIDsと同様の全身性副作用リスクがある。
    他のNSAIDs内服薬との併用がないか、消化性潰瘍・腎機能障害の既往がないか、経口剤と同じ視点でチェックする。
  • 「湿布=局所作用で安全」という思い込みに注意。
    同じ「テープ剤」という剤形でも、設計思想によって全身への影響度がまったく異なる。

まとめ

同じ有効成分を含む貼付剤でも、含有量・製剤技術(TDDS、光学異性体の単離など)によって全身への吸収度合いが大きく異なり、それが枚数制限や適応症の違いとして表れています。「全身に吸収される=どんな痛みにも使える」わけではなく、承認された適応症の範囲内でのみ使用できるという点は、疑義照会や患者説明の場面で特に押さえておきたいポイントです。


参考文献・情報源

  • ジクトルテープ75mg 添付文書(電子添文)、久光製薬
  • ボルタレンテープ15mg/30mg 添付文書(電子添文)
  • ロコアテープ 添付文書(電子添文)、大正製薬
  • ゼポラステープ20mg/40mg 添付文書(電子添文)、三笠製薬
  • ヤクバンテープ20mg/40mg/60mg 添付文書(電子添文)、トクホン
  • フロベン錠40 添付文書(電子添文)
  • 各製品の患者向医薬品ガイド、PMDA公開資料

※本記事は上記一次情報に基づき作成していますが、添付文書は改訂される場合があるため、実際の処方・服薬指導にあたっては必ず最新の添付文書をご確認ください。

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この記事を書いた人

永遠の学習者_φ(・_・)

好きなことを片っ端から学んで、発信している/薬剤師/医療通訳士/教材クリエイター/緩いYouTuber/TikToker
永遠の学習者ですが、勉強は嫌いです。工夫しながら楽しく学ぶがモットー❣️

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