PCI・ACS・PADで使う抗血小板薬まとめ ― エフィエント後発品、先発品と適応が一致

PCI・ACS・PADで使う抗血小板薬まとめ ― エフィエント後発品、先発品と適応が一致

PCI(経皮的冠動脈インターベンション)やACS(急性冠症候群)、PADで登場する抗血小板薬の基礎知識と、エフィエント(プラスグレル)の後発品発売時の情報をアップデートしてまとめます。発売当初は先発品と後発品で適応症が一致していませんでしたが、2026年6月17日付で後発品に「虚血性脳血管障害後の再発抑制」の適応が追加され、現在は先発品と適応が完全一致しています。本記事はこの追加承認を反映した最新版です。一次情報は東和薬品の医薬品インタビューフォーム(2026年6月改訂第4版)、東和薬品・第一三共エスファのプレスリリース、KEGG MEDICUSの添付文書情報等に基づいています。

目次

最重要略語のおさらい

略語正式名内容
DAPTDual Antiplatelet Therapy(抗血小板薬2剤併用療法)アスピリン+P2Y12受容体拮抗薬(クロピドグレル/プラスグレル/チカグレロル)
SAPTSingle Antiplatelet Therapy(抗血小板薬単剤療法)抗血小板薬を1種類使用する治療法
PCIPercutaneous Coronary Intervention(経皮的冠動脈インターベンション)カテーテルで冠動脈を広げる処置。ステント留置後は血栓を起こしやすい
ACSAcute Coronary Syndrome(急性冠症候群)冠動脈が急激に詰まる・狭くなる病態の総称。緊急性が高い
PADPeripheral Arterial Disease(末梢動脈疾患)心臓以外の動脈が動脈硬化で狭窄・閉塞する疾患

DAPTとSAPT、名前が似ていていつも混乱してしまいます…

DはDualのD、SはSingleのSとそのまま覚えると区別しやすいですよ。DAPTはステント留置後の血栓予防に使われることが最も多いですが、実はそれ以外の場面でも登場するんです。

エフィエント後発品、先発品と適応が一致(2026年6月17日承認)

2023年8月にプラスグレル錠「トーワ」「DSEP」がエフィエントのオーソライズド・ジェネリック(AG)として承認され、その後2025年12月に薬価収載、2026年3月に販売が開始されました。発売当初、後発品の「虚血性脳血管障害後の再発抑制」の適応は未承認で、先発品との適応不一致がありましたが、2026年6月17日付で後発品にもこの適応が追加承認され、先発品と完全に一致しました。

エフィエント(先発)プラスグレル「トーワ」「DSEP」(後発・AG)
PCIが適用される虚血性心疾患2.5/3.75/5mg・OD20mg全規格2.5/3.75/5mg・OD20mg全規格
虚血性脳血管障害後の再発抑制2.5mg・3.75mgのみ2.5mg・3.75mgのみ(2026年6月17日追加)
薬価(2026年4月改定)2.5mg ¥169.9/3.75mg ¥237.0/5mg ¥312.5/OD20mg ¥949.62.5mg ¥84.6/3.75mg ¥118.2/5mg ¥149.9/OD20mg ¥471.2

以前は先発品しか脳梗塞の適応がなかった記憶があるんですが、もう後発品でも大丈夫なんですね。

そうですね。今年の6月に追加承認されて、後発品でも脳梗塞の再発抑制で処方できるようになりました。
ただし5mgとOD錠20mgは先発・後発とも脳血管障害の適応を持っていないので、そこは変わらず規格ごとの誤処方に注意が必要ですね。

脳血管障害の適応なら、どの患者さんにも使えるということでしょうか?

そこがポイントで、TOAST分類の「大血管アテローム硬化」または「小血管の閉塞」に伴う脳梗塞に限定されています。
原因不明や他の原因による脳血管障害には有効性が確認されていないため、投与対象にはならないんです。
国内第Ⅲ相試験(J303試験)では、対象患者全体で見るとクロピドグレルに対する非劣性は検証されなかったものの、この2つの病型に絞ったサブグループでは良好な成績が得られたことが、この限定の根拠になっているようです。

プラスグレルの類似薬(P2Y12受容体拮抗薬)

プラビックスエフィエントブリリンタ
成分名クロピドグレルプラスグレルチカグレロル
効果発現遅め速い速い
用法1日1回1日1回1日2回
適応症心・脳・末梢血管心・脳(規格限定)心のみ
個人差CYP2C19に依存少ない少ない
出血リスク標準やや高い高い
後発品ありあり(2026年6月から適応も先発と一致)なし

DAPT・SAPTの使い分けとトレンド

DAPTはステント留置後の血栓予防が最も一般的な使用場面ですが、それ以外にもカテーテル治療を行わないACSの保存的治療冠動脈バイパス術前後脳梗塞の再発予防(高リスク例)PADなど幅広く使われます。継続期間は通常3〜12ヶ月ですが、出血リスクが高い患者や、血栓リスクの低いDCB(薬剤塗布バルーン)のみの治療では1〜3ヶ月に短縮されることもあります。

一方SAPTは、DAPTからの移行や、アスピリンが禁忌の場合、手術前後の一時的な休薬時などに使われます。近年は、DAPT→SAPT移行時にアスピリンではなくP2Y12受容体拮抗薬を残す「アスピリン・フリー戦略」も推奨されるようになってきました。アスピリンは消化管出血・頭蓋内出血のリスクを高める要因であり、アスピリンを中止してP2Y12受容体拮抗薬単剤に切り替えることで、虚血イベントを増やさずに出血イベントを有意に減少できることが臨床試験で示されています。

DAPTからSAPTに移行するとき、アスピリンを残すのが当たり前だと思っていました。

私も以前はそういうイメージでしたが、最近のエビデンスではむしろP2Y12受容体拮抗薬を残す方が出血を減らせるという結果が出ているようですね。
処方箋を見て「あれ、アスピリンが入っていない」と思っても、今はそういう戦略もあると理解しておくとよさそうですね。

ローディングドースと噛み砕き投与

心筋梗塞などの緊急カテーテル治療では、定常状態に達するのを待つ間にステントが詰まってしまうリスクがあるため、通常より多い量を一気に投与する「ローディングドース(負荷投与)」が行われます。

薬剤名ローディング量維持量
アスピリン162〜324mg81〜100mg
クロピドグレル300mg75mg
プラスグレル20mg3.75mg
チカグレロル180mg90mg×2

噛み砕く効果があるのはアスピリンのみです。噛み砕くことで表面積が広がり、血中濃度が上がるまでの時間を約15〜30分短縮できます。クロピドグレルは肝代謝を経て活性化するプロドラッグのため噛むメリットはほぼなく、プラスグレルも噛まなくても15〜30分程度で効果が現れるため、噛むことによる劇的な差は示されていません。

まとめ

  • DAPT・SAPTはPCI後だけでなく、ACS保存的治療・CABG前後・脳梗塞再発予防・PADなど幅広い場面で使われる
  • プラスグレル後発品(「トーワ」「DSEP」)は、2026年6月17日の適応追加により先発品エフィエントと適応が完全一致した(5mg・OD20mgは引き続き心疾患のみ)
  • 脳血管障害への適応はTOAST分類の限定された病型のみに承認されている点に注意
  • DAPT→SAPT移行時は「アスピリン・フリー戦略」も選択肢になってきている
  • 噛み砕く効果が明確なのはアスピリンのみ

注意:こちらは投稿当時の内容なので、後発品の適応症が現在と一致していません

参考文献・情報源


免責事項:本記事は一次情報に基づく情報提供を目的としており、診断・治療・服薬指導の代替ではありません。医療従事者の方は、必ず最新の添付文書・インタビューフォームでご確認のうえご判断ください。一般の方は自己判断で薬の選択・服用・中止をせず、必ず医師・薬剤師にご相談ください。体調に異変があれば速やかに医療機関を受診してください。本記事の情報利用により生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。

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この記事を書いた人

永遠の学習者_φ(・_・)

好きなことを片っ端から学んで、発信している/薬剤師/医療通訳士/教材クリエイター/緩いYouTuber/TikToker
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