今回はインスタのフォロワーさんから質問の多い
医療用のPL配合顆粒と、市販のパイロンPLについてのまとめです。
医療業界では時代遅れの風邪薬と言われる場合が多い印象ですが、
市販では新しい薬という位置付けになっているようですね。
本当のところどうなのでしょうか?深掘りします。

今回は表題の通りPL顆粒とその市販薬についてですが
ちょっと本音で書かせていただきます。
(なぜなら誤解されている方が多いから)
市販の風邪薬のイメージ
コチラ⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎⬇︎
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まず、総合の風邪薬と言うのは余計な成分が入っていることが多いです。
持病により服用できなかったりする場合があります。
市販ではパイロンPLとして知られていますが、
他の市販よりも良い薬だ!

という印象を持ちます。
医療用PL配合顆粒ってどんな薬?
まず成分を見てみましょう。
[成分]
・アセチルアミド
・アセトアミノフェン
・無水カフェイン
・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
これら4つの成分が配合された顆粒剤で、いわゆる風邪薬です。
[用法用量]
成人:1回1g 1日4回
小児(小児用):年齢により量は変わりますが用法は1日4回
小児用は成人用と異なり
[効能効果]
感冒もしくは上気道炎に伴うかきの改善及び緩和
鼻汁、鼻閉、喉・咽頭痛、頭痛、関節痛、筋肉痛、発熱
つまり簡単にいうと風邪症状なのですが、
その中でも効果があるのは
こちらは咳や痰を和らげる成分は入っていません。
PLは時代遅れと言われる理由

PL配合顆粒が発売されたのは1962年
つまり60年前です!
もちろん古いからダメということではありません。
例えば、歴史のあるアスピリンは1897年に生成に成功し
日本で発売されたのは1900年です。
100年以上も昔に作られた薬ですが
今でも第一線で活躍していますね。
というわけで、何度も言いますが
古いからダメというわけではないのです。
ただ、薬というのは同じような効能を持ち
さらに副作用などが少ない新しい薬がどんどん開発されています。
例えば鎮痛剤としては
アセトアミノフェンやイブプロフェン、ロキソプロフェンなど
副作用が軽減された代替品が色々あります。
(アセトアミノフェンはアスピリンと同じくらいの歴史がありますが、
解熱鎮痛薬として広く使われるようになったのはだいぶ後になってからです)
PL配合顆粒に配合された解熱鎮痛剤
PL顆粒の解熱鎮痛剤は
サリチルアミドとアセトアミノフェンです。
サリチルアミドは現在PL以外ほとんど使われていません。
成分の特徴はアスピリンに近いですが、アスピリンよりも胃腸障害は少ないと言われています。
とはいえ、他の新しい鎮痛消炎剤に比べて胃腸障害が少ないというわけではなく、
あくまでアスピリンと比べると弱いという位置づけです。
また、特に小児のインフルエンザ患者に使用するとライ症候群の危険が高まるため
インフルエンザの可能性がある場合使えません。
次に、アセトアミノフェンですが
こちらは「カロナール」でお馴染みのは小さい子供からお年寄りまで
比較的安全性の高い解熱鎮痛薬です。
ただ、抗炎症効果はありません。
アセチルアミドは現在ほとんど使用されていませんが、
名前が似ているエテンザミドは市販薬によく配合されています。
これら二つの関係ですが、
エテンザミドが代謝されるとアセチルアミドになります。
というわけで、一般的には同じ成分として扱われることが多いようです。
プロドラッグというわけではなく、どちらの方が優れているなどの関係ではないようです。
エテンザミドは市販薬のエース(ACE)処方と呼ばれる処方の1成分です。
・A(アセトアミノフェン)
・C(カフェイン)
・E(エテンザミド)よく見るとPL顆粒に似ていますね。
PL顆粒は、エース処方に鼻炎薬を追加した処方とも言えそうです。
PLに配合された抗ヒスタミン
特に時代遅れと言われる理由として挙げられる成分がこちらの抗ヒスタミン薬です。
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
こちらは医療用でも「ピレチア」または「ヒベルナ」という名前でありますが、
今はアレルギー症状に対してはあまり使われていません。
理由はちょっと使いづらいからです。

現在広く使われている抗ヒスタミンは
いわゆる”第2世代”と呼ばれる新しいお薬です。
これらは第1世代で問題になりがちな副作用が軽減されており
患者の背景などを考慮したときに使いやすい成分が多いです。
PLに配合されたプロメタジンで問題になるのは
抗コリン作用と抗ヒスタミン作用です。
PL顆粒はこの抗コリン作用が強いため
閉塞隅角緑内障患者や
前立腺肥大症などの閉塞性疾患の患者には使えません。
一般の方はピンとこないかもしれませんが、
特に2つ目の前立腺肥大症はとても多い疾患で
中高年の男性ではかなりの確率でいらっしゃいます。
50歳代の男性の40%~50%、
80歳以上の男性では80%を超える人が前立腺肥大症にかかっているとも言われています
緑内障も年齢が上がることで罹患率は上がります。

PL顆粒は非常に勧めづらいというお薬だと言えると思います
また抗ヒスタミン作用についてですが
こちらはとにかく眠気が問題になります。
現在眠気がほとんど出ないと言われている抗ヒスタミンがある中で
あえてこの薬を使うメリットと言うとしたら
ということかもしれません。

ゆっくり休める日でないと、日中眠くて困りますよね・・・
というわけで、以上の特徴を見ると
働き盛りの中高年のおじさま方には
非常に使いづらいお薬の代表格とも言えるのではないでしょうか・・・
女性ならいいの?と思いきや
抗コリン作用には口渇(喉が渇きやすい)という副作用があります。
よく話す仕事をされている方にはしんどい副作用ですね。
また、やはり眠気は特に問題視され
男女問わず、特に学生さんや、車の運転をする方にも合いませんね。
では小児には問題ないかというと
小児では特に第1世代の抗ヒスタミンはまれに痙攣を誘発するということで知られています
もちろん抗ヒスタミンは小児のお薬でもよく使われています。
市販薬ではほとんどが第一世代の抗ヒスタミンです。
そのため心配しすぎる必要はないのですが、
もう一点気になることがあります。
小児の場合は特に解熱剤は必要最小限で使うことがあるため
処方薬は解熱剤を別包で作られるのが一般的です。
でも配合薬だとそれらを分けることができないため最小限の薬を使いたい
小児にも医療用では使いづらいイメージです。
PL顆粒に配合されたカフェイン
こちらのカフェインはエース処方と同じ目的で配合されています
一般的には眠気を予防するためかな?と思われがちですが、
この無水カフェインの配合目的は
痛み止めの効果を補助するという目的です。
よく、風邪薬を購入するとき
カフェインが入っていれば眠くならないと思われている方がいますが
眠気を抑える効果はあまり期待できません。
また、普段からコーヒーやエナジードリンクなどを飲む方は
カフェイン過剰になることがあるので注意です。

コーヒー一杯でどれくらいのカフェインが入っているかご存知ですか?
一般的なコーヒー150mlで、おおよそ60~90mgのカフェインを含みます。
ということは、PL配合顆粒を服用すると
毎回コーヒー1杯分のカフェインを摂取していることになります。
PL配合顆粒のメリットデメリット

というとそういうわけではありません
添付文書上では1日4回のお薬になります。
PL配合顆粒のメリット
これは残念ながら医療用に限っての話になりますが、
もし用法通り1日4回服用したら
1日の薬価は ¥26 (1回分¥6.5) です。
保険を適用したらお薬代はとてもお安くなりますね。
(受診料や調剤料などを除いた薬価のみの価格です)
もし解熱鎮痛薬と抗ヒスタミンをそれぞれ処方したとします。
例えば
・カロナール300mg 3錠
・エピナスチン20mg 1錠
(アレジオンのジェネリックで1日1回)
で1日分を計算すると約¥44.5になります
たった2成分ですが、それでもPL顆粒より高くなります。
だから、特に副作用が問題にならず
適応の症状があっていればPL顆粒で医療費は抑えられます。

値段はメリットにはならなそうです。
また
いくつも分けて服用せずに1包服用するだけなので
服用する方も楽ですね(粉が苦手だと大変ですが・・・)
あとはこれは副作用を逆手に取った効果ですが

(この場合カフェインが入ってるのは残念ですが💦)
もし咳や痰などの症状がないなら必要ないですね。
④鎮咳薬の成分が入っていないので咳や痰が無い場合余計な成分を含まない
これらがメリットになるかなと思います。
その辺も考慮して医師は処方してくれるかもしれません。
ただ、風邪薬ならなんでもいいという感じですとどうかな?🙄
市販のパイロンシリーズとの比較

PL配合顆粒は先ほどお伝えした通り60年の長い歴史がある古いお薬なのですが、
市販薬では新しいお薬というイメージではないでしょうか?
市販薬は、2017年にパイロンPL顆粒という名前で発売されました。
医療用発売から55年も経っています。
市販薬の中では新しいシリーズとして登場したイメージがありますね。
実はパイロンシリーズ自体は昔からありました。
非ピリン系の”パイロン®ハイ”
麻黄湯配合の”パイロン®MX”
子供用の”パイロン®乳児用カプセル”
などなどまだまだたくさんあるのですが、
これらはどれも現在製造中止となっています。
パイロンという名前ですが、PL配合顆粒とは特に関係がありません。
最近出たパイロンシリーズは“PL”という文字を全面的に出して
医療用のPL顆粒との関係性をアピールすることでヒットしたのではないかなと思います。
ちなみに新しいパイロンシリーズはどんどん増えており
2022/4現在、このようなラインナップになっています。
長い成分名は見やすいように若干省略しています💦
この表を見るとわかりますが、
パイロンPLが初めて発売された頃は医療用のPLよりも若干配合量が少ない物でした。
その後パイロンPL配合顆粒Proが発売され
医療用のPL配合顆粒と全く同じ成分量になりました。
そして
粉薬が苦手な方のために錠剤も発売されました。
医療用PL顆粒は咳症状に対する成分が配合されていませんが、
市販薬にはPL錠ゴールドと言う製品に咳止めと去痰剤が配合されています。
それもなかなかのしっかり処方です。
このデキストロメトルファンという成分は
医療用では”メジコン”という名前で知られた成分です。
この成分は医療の現場でもよく使用されます。
医療用の用法用量は
1回15~30mgを1日1〜4回
というわけで、多くは1日3回で処方されることが多いので
1日量は45mgぐらいでしょうか?
もちろんMAXでは120mgになりますが、ここまで出ることはほとんどありません。
というわけで、この成分も医療用と同程度配合されているといえますね。
また去痰剤のブロムヘキシンですが、
こちらは医療用で“ビソルボン”という名前で知られています。
この成分は内用薬として存在したのですが、
現在先発のビソルボンは製造中止となり、ジェネリックのみの販売となっています。
パイロンPL錠ゴールドへの配合量ですが
医療用と同じ1日12mgなのでMAXで配合されているため効果が期待できます。
こちらは吸入薬としてもよく使われる成分で
ビソルボン吸入液という製品もあります。
また注射剤もあります。
ただ最近は内用薬としては、ブロムへキシンよりも
カルボシステイン(先発:ムコダイン)や
アンブロキソール(先発:ムコソルバン)の処方の方が多い印象です🙄

医療用のPL配合顆粒と同じものが欲しい!
ということでしたらパイロンPL顆粒Proを選ぶと良さそうです。とはいえ咳関係は配合されていないので
いわゆる総合感冒薬としてどの症状にも聞いて欲しいということなら
パイロンPL錠ゴールドが選択肢になるかなと思います。
そこまで強くなくて良いということなら
という場合はパイロンPL錠
市販のパイロンPLのメリットデメリット
市販のパイロンPLのメリットとデメリットは
医療用のPL顆粒とほぼ同じなのですが、
市販の風邪薬の中で
鎮咳薬が配合されていないのは逆に珍しいので(ゴールド以外)
咳や痰がない風邪の場合は選択肢の1つになるのではないかと思います。

便秘や悪心、呼吸抑制などの副作用が出るものがあるので
症状がない場合は入っていない方がいいですね。
市販薬には錠剤があります。
市販薬の方が服用しやすいかと思います。
なぜPL配合顆粒は人気なの?

その辺を個人的に考えてみました。
他に風邪の配合薬がほとんどない。
医療用では、似たような配合薬でペレックス配合顆粒というお薬があります。
こちらはPL顆粒とほとんど同じようなお薬だと言っても過言ではありません。
抗ヒスタミンが
クロルフェニラミンマレイン塩酸塩になっているだけで
どちらも第1世代の古い抗ヒスタミンです。
副作用などの注意事項もほぼ同じです。
そのため医師としては総合の風邪薬と言ったら
これら(PLやぺレックス)くらいしか選択肢がないんですね。
というわけで、風邪薬=PLというイメージを持つ医師が多いようです。
まずこれを選んで、足りない成分を足すというのも選択肢の一つになります。
ネームバリュー
パイロンPLのキャッチコピーはご存じですか?
「あっ!この薬」
匂わせぶりがプンプンですね(⌒-⌒; )
これはみなさんご存知の、医師が処方してくれるあの風邪薬です!
という意味が込められているものと思います(勝手な想像です)
ということは
「あー、病院でよくもらえるあれね!」
と多くの方がわかるというネームバリューがあるのです。
あえてごちゃごちゃ成分のことをいうより
病院のアレですの方が話が早いのです。
逆に成分で他の風邪薬と比べてしまうと
市販薬の一般的な戦略としては弱いかな〜と思います。
患者さん本人からの希望が多い
ネームバリューがあること、
数少ない風邪の配合薬であること
歴史も長いことなどから昔から風邪にはPLが処方されることが多く、
PLというお薬をご存知の方が多く、
「PLっていう風邪薬ください」
と患者さんの方から医師にお願いするケースが多々あります。
薬局で投薬していても
「私がこれがいいってお願いしたの」
というお話をよく聞きます。
まあ、基礎疾患などがなく、眠気が出てもよさそうな方でしたら
特に問題ないのですが、
そうではなかったり、熱や痛みはないのに咳がひどかったり、
それでも風邪は風邪と自らPLをご所望されているのを見ると
「もったいないな〜」
と思います。
もちろん患者さんに合っていないと思う時は疑義照会をするのですが、
それを申し出ると
「余計なことはしないで!私はこれがいいんだから!」
など言われたこともあります・・・

ちょっとがっかりだけどな〜
基本眠くなると困るし、1日3~4回も飲むのは面倒だし。まあ問題ないなら安くていいのですが・・・
今回のまとめ
では、今回のまとめです。
種類が多く、市販のパイロンPL顆粒Proは医療用と同じ配合量となっている
医療用でよく使われる第2世代よりも副作用が問題になる

他のお薬と同じようにメリットとデメリットがあります。
と思うのではなく
しっかり症状や体質、生活スタイルなどを医師や薬剤師に相談して

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