今回のテーマはプロプラノロールです。
あがり症は使い方が面白いな〜と思ってタイトルに入れてみましたが、
普通にプロプラノロールのお薬についてです。前回同系統のカルベジロールとビソプロロールについて、
慢性心不全に注目して学びましたが
その延長になります。
慢性心不全に使われるβ遮断薬の特徴(カルベジロール&ビソプロロール)
適応症 ①本態性高血圧症 ②狭心症、褐色性細胞腫手術時 ③期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防、 頻拍性心房細動(徐脈効果)、洞性頻脈、新鮮心房細動、 発作性心房細動の予防 ④片頭痛発作の発症抑制 ⑤右心室流出路狭窄による低酸素発作の発症抑制 |
それぞれ条件などがあります。
いっぱいありますね〜💦さらに用法用量など全て覚えなきゃ!と思うとしんどくなるので、
要点だけ押さえておけばいいんじゃないかな?と思います。
そのため、臨床実績も多く、適応もとても多くなっています。
プロプラノロールの用法のポイント
基本的に1日3〜4回の分割で服用回数が多い!
用法用量を確認すると
片頭痛発作の発症予防以外は3〜4回とかなり服用回数が多いのが特徴です。
片頭痛についても、2〜3回なので、これもなかなか多いですよね。
最近は1日1回の薬がとても多いので
毎日服用するにはコンプライアンスが心配なお薬ですね。
逆に、普通錠で1日1回などの回数が少ない処方箋を見つけたら
疑義照会が必要とも言えますね。
徐放製剤はカプセル60mg「サワイ」のみ!
普通錠(10mg)以外には注射剤があります。
普通錠の服用回数が多いのには半減期が短いことが原因ですが、
徐放製剤は後発品の「サワイ」のみになります。(2021/12現在)
以前は先発品のインデラルLA錠というものがありましたが現在はありません。
ただ、せっかく服用回数が少ないのですが、
普通錠に比べて、適応症が限られています。
また、すでに60mg未満で効果が不十分な場合に検討可能となるため
いきなり徐放錠で開始とはなりません。
プロプラノロール塩酸塩徐放カプセル「サワイ」
適応症 ・本態性高血圧症 ・狭心症 |
のみになりす
どちらも、服用回数は1回のみなので、
適応症が合えば、コンプライアンスの悪い患者さんの剤形変更も視野に入れたいですね。
開始用量がある(いきなり高用量使用しない)
徐放製剤以外は全て開始用量の指示があります。
そもそも、徐放製剤はすでにそれよりも小用量での使用経験が必要なので、
開始用量があるのと同じ事ですね。
なので、初めて出た時は用量が多すぎないか確認が必要ですね
服用に特に注意が必要な人
全てではなくて抜粋して理由と主にあげていきます。
β1非選択性のため、喘息患者に禁忌です。
また、心不全に対しても、心機能を抑制し、症状を悪化させる恐れがあるため禁忌になっています。
(ただ、使い方によっては適応外として使用されることもあります。)
脈拍数が減少するため、もちろん徐脈にも禁忌です。
長期間絶食状態の患者
これは後ほど出てくるヘマンジオルの用法とも関係しますが、
低血糖を起こす恐れがあるため禁忌です。
リザトリプタン(マクサルト)服用中の患者
リザトリプタンの半減期が延長し、作用を増強させるために禁忌です。
プロプラノロール特徴的な使い方
β遮断薬はたくさん種類がありますが、
プロプラノロールに特徴的な使い方について学んでみたいと思います。
片頭痛発作の発症抑制
片頭痛発作の発症抑制には
保険適応が認められた薬がいくつかあります。
・ロメリジン(ミグシス)
・ベラパミル(ワソラン)
・アミトリプチリン(トリプタノール)
・プロプラノロール(インデラル)
・バルプロ酸(デパケン,セレニカ)
保険適応として認められているのは以上になります。
片頭痛治療薬であるリザトリプタン(マクサルト)
と併用禁忌である!
なのであえてリザトリプタンを選ぶ必要はないですよね。
発作時に何か薬を使っているか確認が必要ですね
なぜβ遮断薬のうちプロプラノロールのみ片頭痛に効果があるの?
プロプラノロールは脂溶性であり、血液脳関門を通過することで知られています。
そのため、片頭痛に対しても効果が認められています。
ただその特徴から、中枢神経症状の副作用として出る事があります。
例えば、抑うつ症,睡眠障害などがその例に挙げられます。
小児に対する不整脈に使用できる
β遮断薬は脈拍数を少なくする効果があるため
不整脈によく使われますが、
β遮断薬の中で小児に適応があるのはプロプラノロールのみです。
また注意書きがあります。
国内初の乳児血管腫治療薬
プロプラノロールにはシロップ剤があります。
ヘマンジオルシロップ小児用0.375%
こちらは国内初の乳児血管腫治療薬として知られています。
乳児血管腫とは、苺状血管腫とも呼ばれ、
生まれたばかりの赤ちゃんに発症しやすい血管内皮の増殖を伴う良性の血管性腫瘍です。
90%が5~7歳までに徐々に自然消退しますが、
大きさや場所によって臓器や感覚器官に影響を及ぼすこともあるため早期治療が必要とされている疾患になります。
というわけで、食事中または直後に投与することになります。
空腹時を避ける理由は低血糖を起こす恐れがあるためです。
または嘔吐をしている場合は投与しないとされています。
もし、薬剤を吐き出した場合でも追加投与はしません。
あがり症に効く?
では最後に、適応外の使用についてです。
プロプラノロールは脈拍数を少なくして心臓を休ませたり
血圧を下げる、不整脈を改善するなどの効果がありますが、
手の震えなどの振戦にも効果があるとされています。
こちらは相反するβ遮断薬になあるため、
この振戦を抑える効果があるというのはわかりやすいですね。
というわけで、
心拍数を減らして、緊張によるドキドキを抑え、
さらに緊張からくる手の震えも抑える効果が期待できるというわけです。
また半減期が短いため、必要に応じて頓服のように使う事ができるというのも特徴的です。
ただ、こちらは適応外の使用になるため
保険診療ではなく自費になります。
とはいえ、ダイエットなどとは違って、
こちらはもしかしたら、人によっては疾患よりも深刻な悩みかもしれないですよね。実際、個人輸入で買っている方も多いようですし・・・。
注意事項も多いお薬なので、
もし検討するなら、個人輸入で買ってしまうより、
医師に相談してからの方が安心だと思います。
悩んでいる方は”あがり症外来”で検索してみてください。
ちなみに、同じβ遮断薬の中で
振戦に適応があるのはアロチノロールです。
こちらはαβ遮断薬になります。
ただ、こちらはあがり症への頓服ではなくて
疾患の治療目的になるので、やはり保険適応外になるかと思います。
また、メトプロロールなども使われる事があるようです。
プロプラノロールについて学んでみました。また気になるお薬について学んでいこうと思います。
インスタでも簡単にまとめていますので、よろしかったら遊びに行ってくださいね!