薬剤師のNorikoです。前回は安全性の高い睡眠薬として
オレキシン受容体拮抗薬について学びましたが、
今回はさらに自然に近いと言われる睡眠薬『ロゼレム』について学んでいこうと思います。
『ロゼレム』ってどんな薬?
鎮静作用や抗不安作用によらない睡眠をもたらすお薬になります。
昔から使われているベンゾジアゼピン系のお薬になりますね。
とてもよく処方されますが、
一方で問題点も指摘されています。
依存性
中止によるリバウンド
筋弛緩効果によるふらつき、転倒の危険
呼吸器系への影響
緑内障への影響
せん妄、認知機能への影響
もちろん、抗不安作用を持つことや
筋弛緩作用がメリットになることもありますが
メラトニン受容体作動薬ですが、
まずはメラトニンについて確認したいと思います。
メラトニンって何?
メラトニンは脳内の松果体において生合成されるホルモン
で
概日リズム(サーカディアンリズム)を整える役割があります。
メラトニンは夜に多く分泌され眠気を誘い
光によって分泌が減り、目が覚めます。
(光って重要!☀️)
ただ昼夜の区別のない環境(窓のない密室内など)でも、体内時計からの神経出力によって昼高夜低の日内変動は続きます。
逆に強い照明(1000ルクス、コンビニの店内など)を浴びれば、夜間であってもメラトニン分泌量は低下します。
すなわちメラトニンは体内時計と環境光の両方から調節を受けています。
ロゼレムはこのメラトニン受容体に作用するため
自然な眠りを導くお薬です。
(メラトニンそのものではありません。)
というわけで、もともと体の中にあるホルモンに働きかけるお薬だから
自然な睡眠に近く、安全性も高いと言われているんですね。
こちらはリズムを整えるということから
頓服使用ではなく、しばらく続けることで
効果が期待できるお薬です。
(参考資料:厚生労働省e-ヘルスネット[メラトニン])
ロゼレムの特徴
用法用量
- 通常、成人にはラメルテオンとして1回8mgを就寝前に経口投与する。
(ロゼレム 添付文書より)
というわけで用法は1つのみでシンプルですね。
効能又は効果に関連する使用上の注意
- ベンゾジアゼピン系薬剤等他の不眠症治療薬による前治療歴がある患者における本剤の有効性、並びに精神疾患(統合失調症、うつ病等)の既往又は合併のある患者における本剤の有効性及び安全性は確立していないので、これらの患者に本剤を投与する際には治療上の有益性と危険性を考慮し、必要性を十分に勘案した上で慎重に行うこと。
(ロゼレム 添付文書より)
一般的に広く使われているベンゾジアゼピン系で治療を受けていた方には
ベンゾジアゼピン系の方がシャープに効くことから有効性について定かではないため
よく検討して使用するということになりますね。
逆に、全く治療経験のない方は
こちらのロゼレムから始めるのもいいかもしれないですね。
用法及び用量に関連する使用上の注意
本剤の投与開始2週間後を目処に入眠困難に対する有効性及び安全性を評価し、有用性が認められない場合には、投与中止を考慮し、漫然と投与しないこと。
有用性はあまり期待できないので投与中止して他の対策を考えましょう。
ということですね。
禁忌
☑︎高度な肝機能障害のある患者
[ロゼレムの血中濃度が上昇し、作用が強く現れてしまう]
☑︎フルボキサミンマレイン酸塩を投与中の患者
[ロゼレムの血中濃度が大幅に上昇し、作用が強く現れてしまう。]
(ロゼレム 添付文書より)
先発名でルボックスまたはデプロメールのことです。
SSRIに分類されます。
別の医療機関からの処方だと気づきにくいと思うので十分注意が必要ですね。
傾眠(1.2%)、浮動性めまい(0.7%)、 倦怠感(0.3%)
ただしこれは精神疾患のある患者も合わせての数字で
精神疾患の既往及び合併のない患者で場合は
傾眠(0.9%)、浮動性めまい(0.4%)
と、%が下がっているのが分かります。
やはり安全性が高いということが分かりますね。
食事の影響
食事の影響について見てみましょう。
未変化体とM-Ⅱのグラフがありますが、
どちらも薬理作用を持つ成分になります。
(ロゼレム インタビューフォームより)
薬理作用を持つ未変化体,M-Ⅱどちらも食事により効果が弱まっているのが分かります。
特に最高血中濃度が約2/3
M-Ⅱは約1時間も遅れてしまいます。
オレキシン系と同様、
こちらもしっかり効果を得るためには
空腹時に服用することが肝心ですね。
出来るだけ早く食事をとって、
就寝までにできるだけ時間に余裕を持ってもらった方がいいですね。
名称の由来
「健やかな眠りを取り戻し、ばら色の夢を見ましょう」
との願いをこめて Rose REM から名付けられた
実際の効果は?
(インタビューフォーム使用成績調査より)
・睡眠に入る時間の短縮
・睡眠を維持する時間の延長
・中途覚醒の減少
が見られますね。というわけで、全体の睡眠の質が上がっていると言えると思います。
ロゼレムの特徴<メリット>
では、早速メリットについてまとめたいと思います。
- 中止によるリバウンドが見られない
(反跳性不眠や、退薬症状が出にくい) - 身体的依存性がない
- 呼吸抑制を起こさない
- 悪夢の副作用は少ない
(オレキシン系に対するメリット)
オレキシン系のお薬についてはこちら - 長期で使用しても効果の減弱がない
- 向精神薬ではなく、処方日数制限もない
(ただし2週間で効果が見られない場合は中止を検討)
反跳性不眠や、退薬症状や
呼吸抑制、依存性、などなど主にベンゾジアゼピン系で問題となりやすいデメリットが、ロゼレムではほとんど起こらないとされています。
長期投与に関しても、6ヶ月の試験で効果の減弱は見られたなかったとの結果が出ています。
ロゼレムの特徴<デメリット>
では、次はデメリットについてです
- 食事の影響を受けやすい
- BZ系治療歴がある方には向かないかも?
(BZ系より穏やかなので効かない可能性) - 単回投与による効果はあまり期待できない
(即効性はあまり期待できない) - 併用禁忌の薬がある
(フルボキサミンのことですね) - 高度な肝機能障害のある患者には使えない
- ジェネリックがまだないため薬価が高い
(2021/6現在)
+α 他の眠剤との併用は?
ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にロゼレム錠を併用することで、不眠症状が改善し、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を減量又は中止できた成績が報告されています1)。
なお、保険請求の可否は、請求先の審査機関でご確認ください。
(参考資料:武田薬品ロゼレム錠8mg くすりの相談FAQ
堀口 淳ほか:医学と薬学 2014;71(7):1209-1215.)
現在、BZ系や非BZ系で治療中の方も、
まずはロゼレムとの併用でBZ系や非BZ系を減らしたり
中止したりできる可能性があるということですね。
出来るだけ安全性の高い薬への変更などを考えているのですね。
メラトニン受容体作動薬の
『ロゼレム』について学びました。
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