この薬は切れる時間がある?効果が続く?判断する簡単な方法

Noriko

今回は、薬剤師なら絶対知っておきたい定常状態についてです。

計算式はとても簡単なので、これを知っておくと結構普段の服薬指導でも役に立ちますよ!

患者さん対応に自信を持つ必須の知識だと思います

 



定常状態を知るメリット

 

定常状態を知っていると患者さんにこんな情報を盛り込んだ服薬指導ができるようになります。

☑︎服薬開始当日から効果が期待できる薬なのか?

☑︎用法通りに服用しても効果が切れる時間帯があるのか?

☑︎飲み忘れたら、すぐに効果が切れてしまう薬なのか?

 

これらの質問って多いと思うのですが、
根拠を持って答えられるでしょうか?

1日1回だから、きっと持続性があり効果が続く薬だろう。

1日3回だから、きっと持続性がなく、効果が切れる時間があるだろう

なんて予想で答えていませんか?

 

定常状態がある、ないとはどういうこと?

薬学における定常状態(Steady state)とは、医薬品を一定時間ごとに繰り返し投与する時、投与直前の血中濃度(最低血中濃度、トラフ濃度、Cmin)および投与後に到達する最高血中濃度(Cmax)がそれぞれ一定の値となっている状態を指す。

一般的に、定常状態の血中濃度が一定範囲内にある事が治療上重要であるとされる

また、一部の医薬品では、定常状態でのトラフ濃度が一定未満である事が副作用発現防止の指標となっている

 

つまり、繰り返し投与することで血中濃度が安定すれば定常状態になる薬

繰り返し投与しても安定しないのは、定常状態にならない薬といえます。

 

グラフにするとこんな感じ

 

Noriko

グラフを見るとわかるように

定常状態となる薬は、効果が安定するまでにちょっと時間がかるけど、
一度安定してしまえば効果が1日中期待できる一方、

定常状態にならない薬は、効果が切れる時間帯は出てくるけど
1回の服用で、効果が期待できるため即効性がある薬ととも言えますね

 

定常状態になるかならないかどうしたらわかる?

 

定常状態になるかならないか
すぐにわかったら便利ですよね。

でも薬物動態って総じてややこしく難しい・・・

でも、ありがたいことに、
この定常状態に関する計算式には簡単なものがあります。

小学生でもできる簡単な計算式なので
薬剤師はぜひ覚えておきたい式ですね。

計算式はこちらです。

=必要な数字=

①投与間隔:1日1回なら➡︎24時間
       1日2回なら➡︎12時間
       1日3回なら➡︎8時間

②消失半減期:t1/2

というわけで、2つの数値が分かればすぐに計算ができます

どちらも、添付文書まで見なくてもハンドブックなどの情報で十分ですね。

 

=実際の計算式=

☑︎ 投与間隔 ÷ 消失半減期 ≦ 3➡︎定常状態になる

☑︎ 投与間隔 ÷ 消失半減期 ≧ 4➡︎定常状態にならない

☑︎ 3<グレーゾーン<4

 

Noriko

はい、というわけで
ただの割り算です!

それも必要な数字も添付文書を見ればすぐにわかるので
比較的即答できるレベルの計算ですね。

 

添付文書を見ると、計算しなくても
薬物動体の項目で、定常状態になるかならないかの記載があるものもあります。
とはいえ、そこまで探さなくてもこの計算式で予測した方が早い気がしますね。

 

実際に計算してみよう!

やっぱり一度自分で計算してみた方現場でも活用できると思うので、

ぜひやってみてください。

 

では王道(?)にロキソニン(ロキソプロフェン)で計算してみよう!

ロキソニン錠(60mg)

☑︎投与間隔:1日3回➡︎8時間
☑︎消失半減期:約1.22時間

投与間隔÷消失半減期=8÷1.22
 =6.55…≧4
      ➡︎定常状態にならない

 

Noriko

つまり、投与1回目の投与から
効果を十分に発揮できる。
効き目がシャープとも言われますもんね

ただ、効き目が切れる時間帯もあると予想できるため服用タイミングも重要ですね。

 

では次に前回取り上げたキプレス(モンテルカスト)について計算してみよう!

モンテルカストチュアブル錠(5mg)

☑︎投与間隔:1日1回➡︎24時間
☑︎消失半減期:約4時間

投与間隔÷消失半減期=24÷4
=6…≧4
   ➡︎定常状態にならない

 

毎日服用しても、血中濃度が安定せず
効果が切れる時間帯があると予想できる薬と予測できますね。

だから喘息には就寝前の投与が重要!

モンテルカストについては奥が深いので前回まとめました!

よかったら参考にしてください( ´▽`)⬇︎⬇︎⬇︎

調剤時に薬剤師を悩ませるモンテルカスト「トラップに引っかからないで!」

 

では、1日通して効いてほしい抗凝固薬のエリキュースで計算してみよう!

エリキュース(2.5mg)

☑︎投与間隔:1日2回➡︎12時間
☑︎消失半減期:6.12時間

投与間隔÷消失半減期
 =12÷6.12
 =1.96…≦3
  ➡︎定常状態になる

 

Noriko

予想通り定常状態になるので、効果が切れる時間がなく
安定した効果を発揮する薬だということが予想できますね。

ただ、投与1回目では効果は十分に発揮できないため
安定するまでに少し時間がかかりそうです。

 

 

概ね、こちらの式で予測が可能のようですが、
全ての薬がこの式の通りに効果が出たり消えたりするわけではありません。
あくまで参考になさって、詳しくは添付文書やインタビューフォームなどをご確認ください。

 

もっと詳しく知りたい方にはこちらの本がおすすめです。
(今回の投稿はこちらの本を参照して作りました。)

 

どんぐり未来塾の薬物動態マスター術 第2版

 

 

Noriko

というわけで、
今回は、意外に簡単に導ける定常状態と
その活用法についてまとめてみました。

簡単な式ですが、活用していない薬剤師が多いな〜というイメージなので、
ぜひ、この計算式で、カッコよく服薬指導に活かしてみてはいかがでしょうか?

 

 

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